片山幹雄社長の掲げる「地産地消戦略」の第一歩である南京プロジェクトが進められている。シャープは液晶パネルと太陽電池を中心とした技術力が生命線の会社だ。その自覚があればこそ、これまでその技術は国内にこだわって培われてきた。片山社長の地産地消戦略は、その技術を持って海外へ出るものだ。今、あえてシャープが海を渡ることにどのような意味があるのか。その戦略の理想と現実を検証した。(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)

 シャープが進めている三重県・亀山第一工場の液晶パネル製造ラインを中国・南京に移設するプロジェクト。このプロジェクトにかかわる日本の装置メーカーのあいだでは、この数ヵ月、焦りと不安が高まっている。

 液晶パネル製造における「偏光板」と呼ばれるフィルムをガラス基板に貼る工程以降の製造装置の設置と調整を、シャープとプロジェクトのパートナーである中国の南京中電熊猫信息産業集団(CECパンダ)のどちらが主体となって装置メーカーと進めるかについて、折り合いがつかない状態が続いていたからだ。

 南京では中国政府系列の大手電機・電子機器メーカー、中国電子信息産業集団(CEC)と同社傘下のCECパンダ、シャープの3社が中心になり、一大液晶パネル生産拠点の構築が進められている。

 概要は大きく二つ。冒頭のとおり、シャープの亀山第一工場の第6世代(G6)と呼ばれる液晶パネル製造ラインをCECパンダに売却・移設し、2011年3月までに稼働させる。さらに、中国政府からの認可が条件だが、第8世代(G8)の液晶パネル製造工場の建設だ。シャープはCECパンダの液晶パネル製造工場の建設と生産に協力し、技術指導も行う。

 前述したG6の工程について、一時はCECパンダが主体となることに決まりかけ、日本の装置メーカーは肝を冷やした。なぜなら、装置メーカーは亀山時代からシャープとの取引実績を積んできた。当然、南京での移設プロジェクトにも参加できるものとして、シャープからの具体的な移設に関する指示を待っていたからだ。

 結局、8月末にシャープが旗を振ることで決着。プロジェクトはようやく前に進もうとしている。