大きな税制の変化を
もたらすブレグジット
英国の国民投票の結果としてのブレグジット(BREXIT、EU離脱)は、世界の為替・株式市場に大きな混乱を与えたが、新たな首相も決まり、市場にも落ち着きが戻ってきた。これからは英国の交渉技術・能力が世界の注目を浴びることになる。
筆者は、1988年から91年までロンドン・シティに事務所を構えて、欧州金融統合の行方を探る仕事をしていただけに、今回のブレグジットは驚愕である。その後の20年、30年の間に反グローバリズムや反エリート主義が拡大し、それが大英帝国の威信を取り戻せという声と共鳴した結果なのだろうか、いまだ整理がつかないでいる。
さて、英国のEU離脱は税制に大きな影響を及ぼす。1つは、英国とEUとの取引が「域外」取引になるので、ヒト・モノ・カネ・サービスの自由な移動を裏付けていた様々な税制上の特権を一気に失うことになる。これは、英国を欧州のゲートウエーと位置付けてきた日本企業の戦略にも、深刻な影響をもたらす可能性がある。
一方で、英国はEUのくびきから逃れることになるので、租税政策の自由度を取り戻す。「ウインブルドン型(貸し座席型)」政策をとる英国が、OECDメンバー国としての限度・節度はあるものの、相当程度の優遇税制を導入してくることは容易に予想される。
これに対してEUは、これまで英国の反対で進まなかった法人税の課税ベースの統合(CCCTB)や、金融取引への課税など、より統合度を高め、域内であることの優位性を訴える方向に舵を切ることが予想される。
加えて、個別国レベルで法人税・所得税などの優遇税制を仕掛けてくる可能性もある。
このようにブレグジットは、様々な方向で欧州の税制に大きな変化をもたらす可能性がある。以下、限られた情報ではあるが、今後の税制(関税を除く内国税)の行方を占ってみた。
英国がEU域外国になることの
メリットとデメリット
まずは、英国がEU域外国になることによって生じる税制上のデメリットである。
これまでEUは、ヒト・モノ・カネ・サービスの自由な行き来を阻害しないよう、税制の簡素化を図るべく、税制に関する共通指令や共通規則を導入してきたが、これが適用除外になる。