10月13日、成田空港の年間発着枠を現在の22万回から30万回へ増やすことが決定した。騒音問題に反対する住民が合意に傾いた背景には、21日の羽田空港国際化によって起こるであろう成田空港の地盤沈下への危機感がある。
騒音問題を抱える成田空港は長らく、発着枠が需要に追いついておらず、新規就航が難しかった。もたもたする成田を尻目に、都心に近い羽田の国際化が決定。当面、年間6万回の国際線発着枠でスタートするが、2013年度には9万回にまで増やす予定だ。
エアラインはもはや、都心から遠い成田にこだわる必要がなくなる。焦った成田が発着枠拡大に動いた格好だが、「13年度になれば、成田の発着枠は余ってくるのではないか」(エアライン関係者)と見られている。
そこで、発着枠拡大に合わせて国内線網も拡充するほか、第3ターミナル建設構想が持ち上がっているなど、羽田国際化への対抗策を続々と打ち出している。こうした施策は、世界中で成長著しい格安航空会社(LCC)の誘致にも結びつく。
関西に目を転じれば、やはり騒音問題を抱えていた伊丹空港と、それを解決するために建設された関西国際空港のあいだでつばぜり合いが起きている。
関空と伊丹の経営統合を巡る話し合いで、伊丹市側が伊丹空港の国際線復活やジェット機枠拡大を主張しているのだ。騒音を懸念していた住民団体は廃港議論を目の前にして、伊丹活性化に傾いているのだから、皮肉なことだ。
いずれにしても、空港ごとに強化をすれば、ムダな税金がかかる。国全体を見据えた空港政策が必要とされている。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 津本朋子)