英ARMを電撃買収した
孫社長の交渉術はさすが!
Photo:DIAMOND IT & Business
ソフトバンクによる英国の半導体設計大手、アーム・ホールディングス(ARM)の電撃買収が大きな話題を呼んでいます。約3兆3000億円という投資額は、日本企業の海外M&Aとしては過去最大規模です。ARMはスマホに搭載される通信用半導体の回路設計で約95%のシェアを握る独占企業。半導体メーカーに回路設計図を提供し、1個売れるごとにライセンス料を取るビジネスで儲けています。
孫正義社長は「10年ほど前からARMに目をつけていた」という話もありますが、予想外の英EU離脱ショックで大きく円高に振れたタイミングで素早くARMを買収した交渉術はさすが! もう、脱帽ものです。
交渉開始から合意までわずか2週間だったといいますが、普通の日本企業だったらあり得ない話ですね。経営会議やミーティングをセッティングするだけでも2週間くらいかかってしまいます。
さらにスゴイのは、ARMの買収は単純な投資ではなく、ソフトバンクの事業の方向転換を図るためだということです。ソフトバンクグループは創業以来、節目ごとに方向を変え、新事業をテコに業績を伸ばしてきました。現在の通信事業も将来性を考えると、今が方向転換の時期と判断したのではないでしょうか。
私は、この連載でも紹介しましたが、「半導体の性能は18~24ヵ月で2倍になり、価格は半分になる」というムーアの法則で世の中が変化しているというレクチャーをよくやっています。通信事業も例外ではなく、半導体やセンサー、ストレージ事業などと同じように単体のビジネスはますます厳しくなるでしょう。通信スピードはどんどん高速化し、いまやかけ放題は当たり前。そんなことではもう勝負できません。ライバルのキャリアも多く、利益を得るのが難しいビジネスになっているのです。
実際、孫社長自身も記者会見で「通信キャリアは(コンテンツ提供者に通信インフラを提供するだけの)土管化が進む」と話しています。