2012年以降悪化した日中、日韓関係
政治関係と国民感情悪化の悪循環
日中韓三ヵ国の外相会談が本日(8月24日)行われる。執筆時点でその結果は明らかではないが、順調に進めば本年中に日本で三ヵ国首脳会談が開催されることになる。二国間の首脳会談は二国間の政治関係の影響を受けやすいが三ヵ国であればやりやすいという認識もあり、三ヵ国首脳会談は2008年から毎年開催された。
しかし、2012年の李明博大統領の竹島上陸などによる日韓関係の停滞や尖閣諸島問題を巡る日中の緊張の影響でその後開催には至らず、ようやく2015年になってソウルで再開され、本年は日本の主催の順番となっており、予定通り開催されるかどうか注目を集めている。
日中韓首脳会議は東アジアの平和や繁栄という見地からは極めて重要である。しかし、今日に至るまで三ヵ国の首脳の出会いの場という象徴的な意味以外に実質的な役割を果たしているとは思えない。その主要な原因はやはり日韓、日中二国間関係の悪化であった。
日中韓三ヵ国のGDPの総量は2015年には16兆ドルに及び、東アジアGDPの83%、世界全体のGDPの23%に当たる。貿易量についてみれば三ヵ国間の総体は55百億ドルにのぼり、日本、中国、韓国から各国への訪問者の総数は毎年増え続け、2015年には総計約2400万人に上っている。このような統計を見ただけでも日中韓の相互依存の深さと協力の大きな潜在性は明らかであろう。また、戦後日本は70年代から90年代にかけて韓国や中国に対しODA(政府開発援助)や投資を通じて国づくりに大いに貢献してきた歴史もある。
このような深い相互依存関係にもかかわらず、特に2012年以降の日中、日韓政治関係の悪化は顕著であり、これを後追いするように日本と中国、および日本と韓国の相互の国民感情も悪化してきた。2015年の言論NPOの調査では日本の嫌中感情は国民の8割にもおよび、韓国に対する悪感情も5割を超える。対日悪感情も中国では8割、韓国では7割を超えていた。
日中、日韓の間の国民感情の根幹には歴史問題があることは疑いがないが、同時に政府が悪感情を煽ってきたという側面も見逃せない。特に中国の場合は共産党政府の情報コントロールが大きな役割を果たしている。韓国の場合も権威主義的な傾向は否めず、大統領の言動と対日感情は密接に関連している。日本の対中、対韓悪感情も中国・韓国での対日悪感情に刺激を受けるとともに、従来に比べれば対中、対韓関係の重要性を説く政治指導者も少ない。このような国民・政府の相互への悪感情が悪循環を生んでいった。
もちろん、「歴史問題」が消えてなくなる訳ではなく、歴史を巡って双方を刺激しないという基本が守られることが重要である。ただ政府間の関係が変わればそれを反映して国民感情が一定程度変わる。