ソールに搭載された「バランスポッド」(紫色の部分)が、歩行時に不安定感を生み、筋肉を使う量がアップする!

 今巷で大ヒットしているのが「トーニングシューズ」だ。トーニング(toning)のtoneには、「引き締める」といった意味があり、履いて歩くだけで脚線美やヒップアップにつながるという、新しいコンセプトのシューズなのだ。

 様々なメーカーが商品を出すなか、特に売れ行き好調なのがリーボックの「イージートーン」だ。ソールの前後に空気が入りプクッと膨れた「バランスポッド」が搭載されている。

 これが接地時に微妙な不安定さを生み、歩く度に通常のスポーツシューズよりもふくらはぎと太ももの後ろで11%、ヒップで28%筋肉を使う量がアップするという。

 実際にどんな履き心地なのか、筆者も男性用を購入し、履いて歩いてみた。接地時は少し固めのゴムまりの上を歩いているような、従来にない感触だ。しかし、フラついたり、歩きにくかったりすることはない。通勤や買い物など、普段の生活で違和感なく使えそうだ。

 イージートーンはもともと2009年2月に「履くだけのジム」というコピーで世界同時発売され、「口コミでジワジワと人気が広がり、今年春からのテレビCM放映で爆発的人気となった」(リーボックジャパン広報担当者)。

 さらに2010年4月には、派生型のトーニングシューズ「シンプリートーン」を、6月にはランニング用、トレーニング用モデルなども加え、9月には「着るだけでエクセサイズ」と銘打ったアパレル用品も新発売し、いずれも話題となった。

 そして、9月17日にCM第2弾が放映されると人気が再度爆発する。国内でのイージートーンの販売足数でトップシェアのABCマートでは、CM放映後の1週間の売り上げが、その前週の8.7倍に大幅拡大。

 続けてABCマート独自のイージートーンのCMも放映したところ、さらに前週比1.9倍に売上が伸びた。「イージートーンとシンプリートーンを合わせると、9月1日~10月25日の約2ヵ月で販売足数が16万足を超えた」と、営業担当者はその売れ行きのすさまじさを明らかにする。各店舗では、特に女性用で品薄状態が続いているという。

 一方、ニューバランスも10年8月末に「トゥルーバランス」を発売し、トーニングシューズ市場に参入した。バネ構造を取り入れた4層のソールが不安定感を生じさせ、筋肉を引き締める効果を発揮するというものだ。「当初予測を大幅に上回る売上で非常に好調」と、ニューバランスジャパンのPR担当者は話す。ABCマートでも約50店舗で展開し、女性客から好評だという。

 それにしても、なぜここまで人気が出たのだろうか。ABCマートの営業担当者は、「“履くだけ”といった手軽さ、“普段の生活に採り入れるだけ”といった生活に密着した提案ができたことが最大の要因」と話す。多忙でジムに通えない、運動は面倒、でも体型は気になるという現代人のツボにハマったわけだ。

 また、見た目が普通のスポーツシューズと変わらず、さりげなくシェイプアップに励めることも一因だろう。同様に、履いて歩くだけで筋トレ効果があり、96年から販売されている「MBT」は、見た目が「いかにも」といった特殊な形状で、それが一般に普及しずらかった点でもある。

 その他、イージートーン、トゥルーバランスいずれも、ウェブサイトでユーザーの声やモニターの結果などを積極的に発信している。これも購入を後押ししているだろう。

 今後、リーボック、ニューバランス共に、商品ラインナップの拡充を計画している。他社の新規参入も含め、市場がますます広がっていくことは間違いなさそうだ。

(大来 俊)