今日(12月15日)のプーチン露大統領の訪日を前に、日本では一時「北方領土問題での画期的進展があるのでは」との期待感が外務省の一部から流れ、メディアも影響を受けた。

領土と国力は無関係。国土8割減でも戦後日本は大発展した11月19日、APEC首脳会議でペルー・リマを訪問した安倍首相は、プーチン露大統領と約1時間10分にわたる会談を行った  Photo:外務省ホームページ

 だが、11月19日、安倍首相がペルーの首都リマでのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の機会にプーチン大統領と会談したところ、領土問題や平和条約の話は進まず、ロシア側は北方領土での共同経済開発を提案した。これはロシアの法制下で行うことになるから、日本側は簡単には同意できない。

 ロシア軍は今年夏から択捉(えとろふ)島に長距離対艦ミサイル「バスチオン(要塞)」(射程約300km)、国後(くなしり)島に短距離対艦ミサイル「バル(舞踏会)」(同130km)の配備を進めて防備を固めていた。

 リマでの会談の3日後の11月22日、ロシアの「インター・ファクス通信」はロシア太平洋艦隊機関紙「ヴォエバヤ・ヴァーフタ(戦闘配置)」の記事を引用する形で新鋭ミサイル配備を伝えた。ロシア軍は両島の返還に反対し、領土を守る決意を示した。

 どの国の民衆も領土問題ではひどく愛国的になり、妥協的な指導者は「弱腰」と罵倒されかねない。プーチン氏らロシア指導層は、領土問題を片付けて日本と平和条約を締結する方が国益、と分かっていても硬い姿勢を示さざるをえないのだろう。

 日本はロシアだけでなく、韓国とは竹島問題、中国とは尖閣問題で対立している。韓国メディアは「独島(竹島)死守」を唱え、日中のメディアは「尖閣(釣魚台島)防衛」を説く。「善隣友好」は経済上重要であるだけでなく、安全保障の要諦はなるべく敵を減らし、味方を増やすことであることは明らかだが、「テリトリー争い」は生物の本能だけにその解消は容易ではない。