丁寧に資料を作り込んだのに、肝心の場で相手の反応が薄い。「説明は上手だよね」と言われるのに、本当に動かしたい人は動いてくれない。伝え方には自信があるはずなのに、なぜか手応えがない。そんな違和感を抱えている人にぜひ読んでほしいのが『頭のいい人が話す前に考えていること』(安達裕哉著)だ。「話し方のテクニック」より前に立ち戻るべき視点について、本書から引用しつつ紹介する。(構成/山守麻衣)
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「うまいのに伝わらない」という厄介な問題
プレゼンの準備には自信があった。
ロジックは整っている。スライドも見やすく作り込んだ。想定質問への回答も用意した。
「これなら大丈夫だろう」と思って臨んだ会議で、なぜか反応が薄い。
「プレゼンよかったよ」とは言われる。でも、肝心の決裁者は動かない。質問も出ない。話は終わったのに、どこか噛み合わないまま進んでいないように感じることはないだろうか。
何がいけなかったのか、自分ではわからない……。
構成に問題があったとは思えない。話し方がまずかったわけでもない。なのに、手応えがない。
この「うまいのに伝わらない」という状態は、実はいちばん厄介だ。
下手なら直しようがある。でも、表面上は整っているから、どこを直せばいいのか見えない。
安達氏は、その違和感の正体を言い当てている。
「頭のよさ」は誰が決めるのか
安達氏が最初に突きつけてくるのは、こんな前提だ。
頭のよさは、自分が決めるものではない。
目の前の相手が「この人は頭がいい」と認識して初めて、頭のよさとして機能する。
当たり前のようでいて、これはなかなか厳しい指摘だ。
どれだけ論理的に考えても、どれだけ美しく資料をまとめても、相手に届かなければ「存在しなかった」ことになる。自己満足で終わってしまう。
さらに、安達氏はこう続ける。
「どう言うか」を考える前に、「相手はどう受け取るか」を考える。
順番が逆だったのかもしれない。
では、相手に「この人は優秀だな」と思ってもらえれば、それでいいのだろうか。



