泣くべきでない時は、泣くな

 まさか、あの場面で泣くとは思わなかった。海江田万里経産相は、7月29日の衆議院経済産業委員会で自民党の赤沢亮正議員に辞任時期の明確化を迫られて、泣き崩れる場面があった。氏の答弁は「出処進退は自分で決めさせていただく。もうしばらくこらえてください。お願いします」というものだった。

 はたして、この場面で泣く人物に、収束しない原発事故やTPPなど大きな問題が目白押しの経産大臣を任せていていいのだろうか。呆れると同時に不安になった。

 そもそも、ここは泣くべき場面ではないだろう。経産大臣として現在辞任しない理由があるならそれを明確に述べてこそ国会答弁の意義があるし、単に辞任を伸ばしたいだけであっても、「出処進退は自分で決める。それ以上に申し上げることはない」と胸を張ればいい。笑うのでは挑発が過ぎたかも知れないが、泣くよりはまだましだ。

 ここで想像してみよう。海江田氏が、経産相ではなく首相であったら、そして、舞台が日本の国会ではなく、G20のような国際会議の場であったら、どうなのか。原発事故による環境汚染の責任でも問われたとしよう。「何とかしたいと思っているけれども、どうにもならないし、それは私のせいではない」とでも思って、彼は、感極まって泣くのではないか。海江田氏は、次期首相の候補者群の中に名前が挙がる人だが、国民としては、危なくて、あるいは、恥ずかしくて、とても首相など任せられない。

 ついでに言えば、氏は国会で答弁に手を挙げた時に、手のひらに「忍」と書いた文字を写真に撮られている。何を我慢していたのかはご本人に聞いてみないと分からないが、こんな幼稚なことをしなければ国会を乗り切れないような胆力では、そもそも大臣など無理だ。

 尚、本人や支持者が勘違いしているといけないので、付け加えるが、海江田氏は、福島第一原発の事故及びその後の原発行政の不手際などの当事者であり、今後責任を問われるべき者の一人だ。

 もちろん、民主党の次期代表選に立候補することが出来るような立場の方ではない。心を平静に保って、原発事故の処理に際して、官邸や経産省、東京電力などで、何があったのか、正直に洗いざらい述べる覚悟を養っておくべきだ。