日本郵便の暑中見舞いはがき「かもめーる」「ニーズのないかもめーるを無理に売ろうとするのは時代錯誤ではないか」という声は多い。一方、年賀状は「聖域」。2019年から10円値上げしており、郵便関係者は大きな増収を期待する Photo by Rika Yanagisawa

日本郵便の暑中見舞いはがき「かもめーる」の販売をめぐってある変化が起きている。個人に課せられた販売目標を廃止した影響で前年実績を下回る郵便局が続出。背景には郵便局とダイレクトメール業者の収賄事件摘発もあり、コンプライアンスの徹底に動く日本郵便が方針転換を図っている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)

「かもめーるが全然売れていない」──。日本列島が連日、猛暑に見舞われる中、日本郵便の暑中見舞いはがき「かもめーる」の販売は逆に“冷え込んでいる”とある郵便関係者は嘆く。

 暑中見舞いとは梅雨明けから立秋前に送るあいさつ状で、立秋を過ぎると残暑見舞いとなる。かもめーるはそれらに向けた賞品くじ付きのはがきで、6月頭から8月末まで販売する。ただ、近年はメールで代用したり、暑中見舞いを送る文化そのものが下火になっていたりすることから販売環境は非常に厳しい。

 本誌は「2018年度かもめーる支社別販売状況」と題した資料を入手。2億4200万枚に対する全国13支社別の販売達成度が示されている。それによると7月中旬時点で、関東支社の販売実績は昨年同時点に比べて70%程度しか達成していない。冒頭の関係者は「50%未満の局も多い」と言う。

 そして原因は「目標がなくなったから」と指摘。従来かもめーるは年賀状と同様、現場の一人一人に販売目標が課せられていた。しかし高いハードル故達成できず、自分で買い取る通称「自爆」や、金券ショップに持ち込む例が長年、後を絶たなかった。

 日本郵便はこうした事態を問題視。コンプライアンスの徹底に動き、18年の年賀はがき(17年秋発売)から「個人目標の廃止」に方針転換。目標ではなく「指標」という言葉で統一し、各局に対する緩やかな数値設定に変更した。