あらゆる電子機器に使われる積層セラミックコンデンサー首位の村田製作所。デジタル化の加速で需要が急増し、設備不足が深刻化している。急速な増産にはリスクもあり、難しい投資判断が迫られる。 (「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 村井令二)

 積層セラミックコンデンサー(MLCC)の需要が爆発的に拡大する中、首位の村田製作所は、このチャンスを生かせるのか──。

 MLCCとは、電源供給を安定化させる役割を果たし、あらゆる電子機器に使われる基幹部品で、これがなければ電気を通す機器は動かない。

 需要が急増しているのは、米アップルのiPhoneや中国メーカーのスマートフォンへの搭載が増えているだけではなく、自動車分野の採用も加速しており、次世代通信「5G」向けのIoT(インターネット・オブ・シングス)機器への搭載も見込まれるためだ。

 2010年以降のスマホ市場の拡大で著しい成長を遂げてきた村田は、15年度に「通信」向けの売上高が7000億円を突破して連結売上高に占める比率が60%を超えた。16年度はスマホ向け部品の競争激化で、一時6000億円台に後退したが、17年度には再び7000億円を超えている。

 スマホに依存しているだけでは業績の変動リスクが大きくなるが、存在感を高めているのが自動車向けの部品だ。村田の「カーエレクトロニクス」向け売上高は、17年度に2000億円を突破し、経営の安定につながっている(図(1))。

 こうした村田の成長をけん引している象徴的な製品がMLCCだ。17年度に入ってMLCCの受注は急増しており、第3四半期(10~12月期)には売上高が過去最高の1269億円に達した。18年度第1四半期(4~6月期)もそれに並ぶ水準に達し、今期は年間で過去最高を更新する勢いだ(図(2))。

 一般的に電子部品は単価が年々下落する傾向にあるが、6月ごろから村田はMLCCの値上げ交渉を開始した。今期中には浸透する見通しで一段の売り上げ拡大に寄与することになりそうだ。

 MLCC市場で村田は40%を超える絶対的なシェアを誇っており、長期的に市場拡大の恩恵を享受できる位置にいるのも強み。