前回に続き誌上座談会の(下)では、二組のゲイ・カップルの消費行動や子育て、企業に対して向ける視線について聞いた。彼らの言葉から、ダイバーシティ・プログラムを導入しようとしている企業やコミュニティ、また自らの存在を認めてほしいと願うLGBTたちは、多くのヒントを得られるのではないだろうか。(聞き手/在米ジャーナリスト 瀧口範子)

企業のトップがLGBTを理解すれば
嫌がらせや悪口はなくなっていく

――LGBTに関して、現在仕事をしている政府組織や企業ではどのような活動がありますか。

LGBT誌上座談会inサンフランシスコ(下)<br />自らを社会から隔離してばかりではいけないピーター・ワイズナー氏(左)とジョン・ハドソン氏(右)
Photo by N.T.

ピーター・ワイズナーさん:うちの会社では、全社員を対象として毎年多様化トレーニングがあり、履修証書も取得しなくてはなりません。また、サンフランシスコのプライド・パレードでは大手スポンサーとなって、CEOも自ら参加します。

 パレードの前には全社員にメールが来て、パレードへの参加を呼びかけたりするオープンな環境です。企業は、オフィシャルなスタンスと中身が違うことがよくありますが、サンフランシスコ地域の企業は言動が一致していると思います。

ジョン・ハドソンさん:ピーターが務めている医療関連企業は、本当にモデル的な存在です。企業の中には、実際にはゲイを嫌う人間もいるでしょう。そういう人たちを変えることはできません。けれども、企業のトップ自身が繰り返し、直接にLGBTへのサポートを明解にすることで、気の向くままにLGBTへの悪口を言ったり、いやがらせをしたりしてはならないという意識が植え付けられる。人事部も、何らかの訴えを受けるとそれにすぐ対処するようでなければいけません。ハラスメントはすぐに広まりますから。

リンダ・ストニアーさん:以前は、組織内でLGBT職員のグループがあったのですが、今はありません。政府関係の組織に関しては、すでに1990年代末からアンチ・ゲイのポリシー(規定)があるので、そのためかもしれませんし、職員が全体的に歳をとってきたからかもしれません。