ヤフーが追求する「最強」事業部人事のかたちとは?Photo:Shutterstock

事業部人事とは、営業や生産などの事業部門を「元気」にすることを目的として、人事制度・人材開発・組織開発などの諸サービスを事業部門に提供する、「ひとと組織のプロフェッショナル人材」を指す。経営者や事業責任者のパートナーとして、ひとと組織の面から事業成長の実現、課題解決を求められるため、「HRビジネスパートナー(HRBP)」とも呼ばれる。従来の人事部が、本社人事部として中央集権的に人事制度の構築と運用を担っていることとは対照的に、日々課題が生まれる現場に入り込み、その課題解決を支援することをめざしている。

本連載では、中原淳氏(立教大学教授)が導入企業の人事責任者などと対話し、日本でも広まりつつある事業部人事の現状と将来の可能性について明らかにする。中原氏は、「これからの人事は、『事業部を元気にする人事』や『事業部のトップをサポートする人事』が今まで以上に求められる」とする。

今回は、組織開発や「1on1ミーティング」などで高い成果を上げているヤフーの人事部門で事業部人事の責任者を務めている池田潤氏(ピープル・デベロップメント統括本部 ビジネスパートナーPD本部長)にお話をうかがった(対談は前後編の2回でお届けする。今回は前編)。(構成:谷山宏典)

2012年の経営改革を機に
事業部人事を導入

中原 まずはヤフーの人事制度における事業部人事の位置づけについて、教えていただけますか。

池田 はい。弊社の人事部門である「ピープル・デベロップメント(PD)統括本部」内に「ビジネスパートナーPD本部」があり、その下に「ビジネスパートナーPD1部(メディア系事業部門担当)」「ビジネスパートナーPD2部(コマース系事業部門担当)」「ビジネスパートナーPD3部(テクノロジーおよびバックオフィス系部門担当)」があります。この各部が事業部人事としての役割を担い、それぞれの事業部門に対して人事サービスを提供する体制を採っています。なお、PD企画部(人事制度企画・人財開発・組織開発担当)も置かれており、事業部門に近いところで現場感を持ちながら業務遂行しています。

中原 事業部を担当する各部には、どれくらいの人員を配置しているのですか?

池田 兼務もありますが、だいたい10人強ずつです。ビジネスパートナーPD本部全体では50~60人の社員がいます。

中原 それぞれ10人強のメンバーで、何人ぐらいの事業部を見ておられるのですか?

池田 メディア系で三千人ぐらい、コマース系だと二千人弱。テクノロジーおよびバックオフィス系も二千人強は担当しています。