企業にパワハラ対策を義務づける「パワハラ防止法」が、いよいよ6月から施行される(中小企業は2022年4月から)。パワハラ相談が急増する一方で、法施行に向けて進められている企業のパワハラ対策は形式的なものにとどまっている。そうした状況に、労務問題に詳しい弁護士の向井蘭氏は「パワハラを放置する企業は、将来、経営が立ち行かなくなる恐れがある」と警鐘を鳴らす。パワハラを放置すると、離職者や休職者が増え、職場の生産性が下がるなど、企業にとって大きな損失が出る。パワハラ対策は経営上の重要課題であるとの認識が必要だ。

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パワハラ対策に取り組めない企業に未来はない

 近年、パワハラの相談件数は右肩上がりで増えている。都道府県労働局に寄せられる「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は、2008年に3万2000件にとどまっていたのものが、2018年には8万件を超えた。こうした背景から、企業にパワハラ防止強化を義務づける「パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)」が6月1日から施行される。企業のパワハラ対策は、待ったなしの状況だ。

 パワハラが発覚すると、企業は被害者から損害賠償金を請求されたり、世間に広まれば社会的な信用を失う。そして「事業に最も影響をもたらすのは人材流出や採用難」と指摘するのは、労働法務が専門で、企業(使用者)側のハラスメント問題を数多く手がけてきた弁護士の向井蘭氏だ。