感情的にならない話し方 和田秀樹Photo:PIXTA

部下のミスにはめっぽう厳しいが、自分の間違いは頑として認めない、そんな器の小さい上司に思い当たる人は少なくないかもしれません。そうした心の狭さがどこから来るのか、人間心理に関する多くの著書を持つ精神科医の和田秀樹氏の新著『感情的にならない話し方』からの抜粋で解説します。

部下のミスには厳しいが
自分のミスは認めない

 心の余裕というのは、簡単にいえば許すことです。許す、認める、受け入れるといった、心の大きさと言えばわかりやすいかもしれません。

 感情的になりやすい人だけでなく、わたしたちがつい感情的になってしまうときにも、ほとんどの場合は心の余裕がなくなっています。許せない、認められない、受け入れたくないという気持ちです。

 したがって、相手のちょっとしたミスや間違い、自分への批判に出合うとたちまち感情的になってしまいます。他人の間違いは許せないし、自分が間違っていることは認めないのです。ずいぶん身勝手な態度ですね。

 たとえば他人が間違えたときには「間違いで済むのか!」と責めます。「こんな間違い、許されると思うの!」とか、「間違えるなんて信じられない」と怒ったり呆れたりします。そのくせ自分が責められると「わたしは間違ってない」と言い張ります。「わたしのどこが間違いだっていうの!」と食ってかかります。とにかく心が狭いのです。

 こういった心の狭さがどこから来るのかといえば、2つの理由が考えられます。1つはまず、人間は誰でも間違えるという当たり前のことを素直に認められないからです。間違いなんて誰にでもあると素直に思える人でしたら、他人の間違いもあっさり許せますし、自分の間違いもあっさりと認めることができます。「気にしなくていいよ、わたしだってしょっちゅう間違えるんだから」という言葉が笑顔とともに出てきます。