投資家が知っておくべき<br />「たった1つのこと」

突如、コロナ禍に見舞われた2020年。人生、何が起こるかわからないことを痛切に感じさせられた。会社だっていつ何時、潰れてしまうかもわからない。健康上の理由で、仕事が続けられなくなってしまう可能性だってある。公的年金の支給開始年齢は、どんどん後退しており、死ぬ間際まで受け取れないような勢いだ。
「老後2000万円問題」も取り沙汰されたが、もはや自分の身・家族の身を守るには、仕事とは別に、投資によって自力でお金を増やしていくことが欠かせない時代となっている。
そうはいっても「投資してみたいけど、なんとなく始められない」という人は多い。その理由の第一は、なんといっても「よくわからないから」だろう。日本には「株はギャンブル」「投資は悪」のように考える人も、依然として多い。
株式投資の初心者はもちろん、すでに投資経験が豊富な個人投資家も知っておくべきことを、話題の新刊『10万円から始める! 小型株集中投資で1億円【実践バイブル】』の著者・遠藤洋さんに聞いてみた。
取材者である私は、まったくの投資素人。正直なところ、この取材依頼を受けたとき、「小型株集中投資で1億円」と聞いて、ちょっと怪しげな先入観を抱いてしまったことも事実だ。
ところが、著者の遠藤さんに素朴な疑問を次々とぶつけてみたところ、投資の基本のみならず、個人投資家に欠かせない投資に対する考え方、もっというと哲学のようなものさえ感じられ、私が抱いた先入観は完全に氷解した。
大学生のときに投資を始め、数々の失敗と成功をくり返しながら遠藤さんがたどりついた「小型株集中投資」は、手元資金が限られる個人投資家が、最も効率的に資産を増やせる投資法だという。
投資経験ゼロでも、投資を身近に感じられるヒントが満載だ。
(取材・構成 イイダテツヤ/撮影・疋田千里)

ほとんどの人は「労働者」
「資本家」になってみないか

――「これから株式投資を始めたい」と思っている人や、少しはやっているけれど「もうちょっと本格的にやってみたい」という人が、まず知っておいたほうがいいことは、どんなことでしょうか?

 大きなことを言ってしまえば「資本主義のしくみを知る」ことが大事だと思っています。

 ただ、そんなことをいきなり言われても訳がわからないと思うので、まずは「労働者と資本家の違い」を理解しておくこと。これが重要ですね。ここでいう「資本家」とは、「投資家」とほぼイコールだと捉えてもらっていいです。

 そもそも「労働者」と「資本家」は、まったく違うルールで生きています。

 平たく言ってしまうと、自分の時間を提供してお金を得ている人、つまり「時間」と「お金」を交換しているのが労働者です。

 一方、資本家は「お金」を使って「お金」を生み出しています。自分の時間を使わなくても、お金を出すことによって、それよりも大きなお金を得る。これが資本家の生き方です。

 非常に大雑把ですが、私はそう定義しています。

投資家が知っておくべき<br />「たった1つのこと」遠藤洋(えんどう ひろし)
投資家・自由人
1987年埼玉県生まれ。東京理科大学理工学部電気電子情報工学科在学中の夏休み、なにか新しいことをやってみようと、家庭教師のアルバイトで貯めたお金を元手に知識ゼロの状態から投資をはじめる。すると、有名企業の株より小型株、分散投資より集中投資のほうが実は低リスク・高リターンであることを実体験。大学卒業後、ベンチャー企業に入社するも、投資で得た資金を元手に26歳で独立。本質的な価値を見極め「1年以内に株価3倍以上になる小型株」へ集中投資するスタイルで、最大年間利まわり+600%、1銘柄の最大投資益+1200%など、1銘柄だけでも億単位のリターンを達成。噂を聞きつけた資産家から「10億円を預けるから資産運用して欲しい」と頼まれたこともあるが、いまのところ外部運用はすべて断り、自己資金のみで運用している。その投資経験をベースに、経営者、上場企業役員、医者、弁護士、ビジネスパーソンなど、これまで1500人以上の個人投資家を指導し「勝てる投資家」を数多く輩出。現在は投資しながら1年のうち半分は国内外を旅して自由を謳歌しつつ、次世代を担う投資家や事業の育成に力を入れている。前著『10万円から始める! 小型株集中投資で1億円』がベストセラーに。

――そう言われると、とてもわかりやすいですね。

 言われてみれば、すごくシンプルで、当たり前の話ですよね。

 私が講演で話したり、本に書いたりしているのは、「お金を増やす」にしても、せっかくなら「労働者として稼ぐだけでなく、資本家としてもお金を稼いでみてはどうですか?」ということなんです。

 会社員や公務員、フリーランスなど、働き方の違いはありますが、きっとほとんどの人が、まずは労働者として「自分の時間」を提供して、お金を得ていると思います。

 それはもちろんいいのですが、結局、それってお金を増やすために「自分の時間」しか使ってないですよね。

 でも、世の中にはもう一つの選択肢があります。「自分のお金を使って、お金を増やす」という選択肢です。

 だったら「そっちもやったほうがいいに決まっている」というのが私の思いです。

「労働」と「投資」のルールはまったく違いますが、似ている部分も多いです。ほとんどの人は、当たり前のように「自分の時間」を投資する先を決めています。たとえば、就職とか転職です。

 自分の時間を投資するのに「どこがふさわしいかな」と考えて、就職先や転職先を決めているわけです。その結果、自分が働いている会社が利益を出せば、その分のリターンを毎月の給与やボーナスとして得られる。

 これが労働の大まかなしくみです。

 同じように、「自分のお金」をどこかに投資すると、その会社の経営者だったり従業員たちが、自分の代わりに商品やサービスを生み出したり、戦略を立てて売ったりしてくれる。

 そうやって会社が儲かり、大きくなれば、お金を投資した分、リターンを得られる。これが投資のしくみです。

 そういうふうに考えてみれば、就職と投資はすごく似ていると僕は思っています。

――なるほど。「労働者と資本家」と言われると、話が大きすぎてリアルに感じにくい部分がありましたが、「就職と投資は同じ」と言われれば、すごく身近で「やってみようかな」という気になりますね。

 立場が「労働者」(会社員など)か「資本家」(投資家)かという違いがあるだけで、どちらも「自分の時間」と「自分のお金」というリソースがあるのですから、なにも二者択一で片方だけ使うのではなく、両方使えばいいと、私は単純に思うのです。