燃料費の高騰、高止まりはドライバーにとって頭の痛い問題。だから燃費のいいエコカーに乗り換えるユーザーも多いわけだが、クルマを換えずに燃費を良くする方法として注目を集めつつあるのが“低燃費タイヤ”だ。タイヤ燃費性能の横並び比較が可能なラベリング制度の導入で、各社の技術競争は激しさを増している。住友ゴム工業が次世代を見据えた環境タイヤ技術セミナーで明らかにしたこと、それはスーパーコンピュータ「京」の徹底活用だった。
(モータージャーナリスト・竹内龍男)

 低燃費タイヤは、それに履き替えるだけでクルマの燃費がよくなるタイヤだと考えていい。従来技術では一般的にタイヤを低燃費化=転がり抵抗を低減するとウエットグリップ(濡れた路面でのグリップ性能)がダウンする。燃費を追求して雨の日にスリップしやすいタイヤが増えては困るわけで、日本自動車タイヤ協会は2010年1月から業界自主基準であるラベリング制度を開始した。転がり抵抗とウエットグリップ性能のテスト方法をメーカー間で統一して、市販タイヤの性能表示を義務付けたのだ。

スパコンを駆使した先端ナノテク採用<br />日本がリードする「低燃費タイヤ」技術の最前線

 同時に低燃費タイヤの基準を定めた。2つの性能が一定以上を満たす(転がり抵抗がA~AAA、かつウエットグリップ性能がd~a)タイヤだけが「低燃費タイヤ」と表示できる仕組みだ。

 ラベリング制度以前は各メーカーのテスト方法がバラバラで、都合のいいデータを抽出して自由に「エコタイヤ」や「環境配慮商品」などと謳うこともできたのだが、状況は一変した。新制度には日欧米韓の主要8メーカーが参加、各タイヤの性能が横並びに把握できるようになった。ユーザーが「安全で燃費のいいタイヤ」を簡単に見分けられる有意義な制度であり、タイヤを選ぶときはぜひ参考にしたい。

 例えば転がり抵抗BからAAAの低燃費タイヤに履き替えると、走行状況にもよるが、実際の燃費は約4~10%の改善が可能。これは「リッター約5~14円ほど安いスタンドで給油した」のと同じ意味を持つ。1円でも安いスタンドを探すドライバーが多い中、軽視できない存在だとわかるはずだ(タイヤの燃費寄与率を10~25%で換算、ガソリン価格リッター138円の場合)。