世界のGEが40億ドル投資したDX化が失敗、CEO直下のプロジェクトがぶつかった壁Photo:Smith Collection/Gado/gettyimages

組織でDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進させるには、超えるべき壁がいくつかあります。ハーバードMBA卒、元Google本社勤務で現在、シリコンバレーでAI​開発会社を経営する石角友愛氏の著書『いまこそ知りたいDX戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)から抜粋してお届けします。

GEのCEO直下DXプロジェクトはなぜ失敗したか

 世界的なメーカーであるGE(米ゼネラルエレクトリック)が40億ドルも投資をした組織「GEデジタル」をご存じだろうか。本社のあるボストンから5000キロも離れたシリコンバレー郊外にオフィスを持ち、主にIT業界から約5500人の社員を採用してつくったDX実行部隊だ。

 残念ながら、このGEデジタルは2019年にGE本体と切り離され、主事業に注力することを理由にスピンオフをすることを発表した。スピンオフの発表は、GEがGEデジタルの優先順位を下げたことを意味しており「急速に組織を変化させようと試みた結果の失敗例」として知られている。

 GEデジタルは、プレディクス(Predix)というIoTプラットフォームを開発して商品化することを目的としていた。

 GEの主要ビジネスには産業用機器などの製造販売が含まれている。そのハードウェア にセンサーなどをつけてデータを収集し、解析やAIによる予測モデルなどを顧客へ提供するIoTデータのOSをつくろうというビジョンだった。

 マイクロソフトがウィンドウズでパソコンのOSという(ほぼ)独占的立場を築いたように、IoTプラットフォームにおけるOSのポジションを狙えたら、2025年までに11.1兆ドルの売上増加の機会があるとの見込みもあった。

 OSを作るためにはさまざまIoTデバイスから吸い上げるデータの平準化を行い、解析レイヤーでの圧倒的シェアをとる必要があった。

 しかし、GEは伝統的にハードウェアが強い会社だ。GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)やSAP、IBMなどの大手IT企業と真っ向から勝負するため、当時のCEOだったジェフ・イメルトは、会社を根本的にデジタライゼーションする必要があった。