総合商社の既存ビジネスが「陳腐化」の危機に直面している。それを防ぐための鍵は、デジタルトランスフォーメーション(DX)にある。各社各様の次世代化戦略を推し進めているが、2021年はその真価が問われる年となる。特集『総予測2021』(全79回)の#40では、事業モデル転換を模索する商社の姿を描く。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
21年度は回復見込みも業界覆う危機感
「ゆでガエルになって死んじゃう」
「世界の変化が激しく新たなビジネスモデルが生まれる中では、(既存事業が)陳腐化していく脅威もある。既存の事業が捉え切れていない領域での成長の取り込みが、本部のミッションになる」
2020年12月3日、総合商社の丸紅が開催した事業説明会でそう力説したのは、その前年4月に新設された次世代事業開発本部の大本晶之本部長だ。その最大の使命は大本本部長が説明するように、丸紅が現状で取り込めていない「ホワイトスペース(空白地帯)」における新規ビジネスの創出にある。
同本部の損益は19年度が37億円の赤字、20年度は30億円の赤字を見込む。ベンチャーキャピタリストなど外部人材を含む約100人の陣容で、現状は赤字の垂れ流しだ。それを承知で丸紅がなぜ同本部を立ち上げたかといえば、まさに既存の事業が「陳腐化」する危機感があるからに他ならない。