明体操競技場を視察するコーツ調整委員長Photo:EPA=JIJI

厚生労働省のアドバイザリーボードは、「デルタ株」の拡大で、東京オリンピック・パラリンピック開催期間中に都内で新型コロナウイルスの感染爆発が起きる可能性を試算した。にもかかわらず、ワクチン接種は遅く詳細不明、「バブル方式」は穴だらけ、開会式や複数の競技を深夜まで行う計画で五輪“強行”に邁進している。さすがに無観客が想定され、パラリンピックのみ中止する可能性もささやかれ始めたが、「亡国の祭典」は一切中止すべきではないか。(東京五輪組織委員会関係者 目黒一郎)

五輪期間中に都内感染者1日2000人の試算
「ウガンダ選手団」以外も対策は穴だらけ

 東京都内の新型コロナウイルスの新規感染者数は、7月3日に716人を記録するなど、第4波をしのいだものの、ここへ来てリバウンドに転じたという事実は明白です。

 コロナに関する厚生労働省の専門家組織「アドバイザリーボード」は6月30日、感染力が特に強い「デルタ株」の拡大を念頭に、強い対策を実施しなければ、7月下旬から8月中旬ごろに爆発的な感染が起き、都内の1日の感染者数は東京オリンピック開催期間中に2000人に達し、確保病床数以上の患者が発生するとの試算を公表。感染者が1000人に達した時点での緊急事態宣言が効果的だとしています。

 しかし、緊急事態宣言下でもにぎわう繁華街や観光地の光景を私たちは何度も目にしてきました。そのうえ五輪開催を強行すれば、何万人もの外国人が来日します。一体どうやって感染拡大を抑えるというのでしょうか。

 これまで大会組織委員会などは、選手や関係者を隔離した状態の中で競技などをさせる「バブル方式」で感染を防ぐと強調してきました。しかし6月、ウガンダから来日した選手団9人のうち2人が、アストラゼネカ製ワクチンの2回接種を終えているにもかかわらず、デルタ株に感染。うち1人は、ホストタウンである大阪府泉佐野市で陽性が判明するというありさま。一体どこが「バブル方式」なのでしょうか。

 五輪をめぐる感染対策は、素人目に見てもツッコミどころ満載、穴だらけです。もちろん、感染症を専門とする医師からもすでに、厳しい批判の声が多数上がっています。

 6月26日には組織委が、約7万人のボランティアスタッフにワクチン接種が可能と発表しましたが、2回目の接種が7月31日以降という計画には、開いた口が塞がりません。五輪の開幕は7月23日ですが、十分な抗体ができるのは、2回目の接種から2週間後だからです。

 丸川珠代五輪担当大臣は6月29日の記者会見でこの問題を問われ、「1回目の接種で一次的な免疫をつけていただきたい」と、科学的に完全に誤った発言をして批判を浴びました。人命軽視も甚だしいと怒りを禁じ得ません。

 また、大会でボランティアスタッフと同様の業務をするアルバイトや派遣社員は、ワクチン接種を受けられるのでしょうか?

 組織委職員の多くは、感染再拡大や政府の対応によって右往左往させられ、連日の朝帰りなど、とんでもない残業を強いられています。「もしワクチンの副反応で1~2日寝込んだら業務にならない」との理由で接種を忌避する雰囲気すらありますし、政府や都の担当者は、そうした実態を知らないようです。アルバイトや派遣社員はまず、接種は間に合わないでしょう。

 他にも、報じられていない感染対策の穴はまだまだあります。