バイデン大統領の「波瀾万丈」な人生、二回訪れた悲劇の別れPhoto:123RF

悲劇を知る「中間層の代表」

 第46代米国大統領に選ばれたジョー・バイデン氏は、波瀾万丈のファミリーヒストリーの持ち主である。

 1972年、デラウェア州の駆け出し弁護士であったバイデン氏は、29歳の若さで上院議員に当選する。ところがその直後に、最初の妻と長女が交通事故で死亡。同じ車に乗っていた3歳の長男と1歳の次男も重傷を負う。

「議員などとても務められない」と、しばらくは絶望の淵に沈んでいた。ようやく公務に復帰する決心はしたが、2人の子どものそばを離れることができない。そこで片道1時間半をかけて地元からワシントンDCへ鉄道通勤することを決意した。人呼んで「アムトラック(全米鉄道旅客公社)のジョー」。この庶民性が政治家として生涯の「売り」となった。

 政治家としては順調なキャリアを積み、上院議員に連続6期当選。外交委員長や司法委員長などの重職を歴任する。ただし、世に「バイデン法案」と呼ばれるような立法成果は乏しい。むしろ人間関係を大切にし、水面下で野党との合意を目指す古いタイプの政治家である。日本でいえば「国対族」といったところか。2008年には、民主党の大統領候補となったバラク・オバマ上院議員から、副大統領候補の依頼を受ける。議会工作を得意とし、外交に強いバイデン氏は、若きオバマ氏の弱点を補い、絶妙なコンビとなった。