糖尿病患者の脚切断リスク、非糖尿病者の10倍にもPhoto:PIXTA

 糖尿病の合併症では腎不全や失明が思い浮かぶが、脚の切断率が約10倍に跳ね上がることは意外に知られていない。

 奈良県立医科大学の研究グループは、国内の診療報酬明細書(レセプト)データを集積した「NDB」から、2013年4月~18年3月の5年間に初めて脚を切断した患者のデータを抽出。糖尿病の有無によるリスクを比較した。

 対象期間の5年間で、足首より上の胴体に近い部分で脚を切断する「大切断」例は3万0187人、足首から下の足指やくるぶし、かかとを切断する「小切断」例は2万9299人だった。つまり日本では、年間1万人以上の人が新たに脚の大切断、もしくは小切断に直面していることになる。

 糖尿病の有無で比べた結果、10万人あたりの大切断の発生率は、糖尿病患者で年間21.8人、非糖尿病者で同2.3人と、糖尿病患者の大切断リスクが9.5倍高いことが示された。

 小切断に至っては、糖尿病患者10万人あたり年間28.4人に対し、非糖尿病者で同1.9人と、糖尿病患者のリスクが14.9倍にも上る。また、男女別では大切断、小切断ともに男性糖尿病患者でリスクが高かった。

 血糖コントロール不良の糖尿病患者は、(1)末梢の神経障害で感覚が鈍りやけどやけがを放置しがち、(2)血行障害で皮ふや筋肉など脚の組織が壊死してしまう、(3)皮ふの感染症が悪化しやすいため、脚の病変が急速に進行する。切断という事態を避けるには、日々の「フットケア」が重要だ。

 フットケアの基本は「観察」「清潔」「保護」の三つ。まず、入浴前と外出後に足をじっくり観察し、傷の有無を確認しよう。入浴の際は、石けんを泡立て指の間からかかとをやさしく洗い、タオルで押さえるように水気を取ること。皮ふのバリア機能を保つために保湿を心がけるほか、足に合った靴やキツすぎない靴下で血行を妨げない工夫も必要だ。

 近年は糖尿病患者を対象とした「フットケア外来」を開設している病院も増えてきた。正しいフットケアを知り、血糖とともに足の健康も管理したい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)