ジェンダーギャップを乗り越えるために今すべきこととは――資生堂と日本IBMが取り組むD&Iデザイン:McCANN MILLENNIALS

世界経済フォーラムが発表する「ジェンダーギャップ指数」。2021年のランキングにおいて、日本は156か国中120位という結果だった。これは、ジェンダー平等の観点で日本が世界に後れを取っていることにほかならない。日本の企業は、この現状にどう立ち向かうべきなのか。
『大企業ハック大全』刊行に先駆けて、2021年10月31日に開催されたONE JAPAN CONFERENCE 2021では、ジャーナリストの浜田敬子氏進行のもと、魚谷雅彦氏(株式会社資生堂 代表取締役社長 兼 CEO)、岡島悦子氏(株式会社プロノバ 代表取締役社長/株式会社ユーグレナ 取締役CHRO)、福地敏行氏(日本IBM 取締役副社長)が、日本企業のダイバーシティ&インクルージョンについて議論した。(構成/矢野由起)

大企業はジェンダーギャップにどう取り組んでいるのか

ジェンダーギャップを乗り越えるために今すべきこととは――資生堂と日本IBMが取り組むD&I魚谷雅彦(うおたに・まさひこ)
株式会社資生堂 代表取締役社長 兼 CEO
1977年に同志社大学で学士号、1981年ニューヨーク市のコロンビアビジネススクールでMBAを取得。2014年4月に資生堂の社長に就任するまで、30年以上にわたって日本および世界の日用消費財関連企業でマーケティングおよびマネジメントに携わり、その間、日本コカ・コーラ株式会社のCMOおよびCEOなどを歴任。現在は1872年創業の化粧品メーカーである資生堂の活性化を自らの使命と定め、長年にわたって培ってきた日本の伝統を基盤としながら、業界を代表するグローバル企業になることを目指している。

浜田敬子氏(以下浜田):まずは、皆さんがジェンダーギャップを解消するために取り組まれていることを教えていただけますか?

魚谷雅彦氏(以下魚谷):資生堂はもともと女性管理職が他社に比べて多かったのですが、それでも20%台でした。そこで、私はまず30%、そして40%を目指そうと明確な目標を提示。管理職のみならず、国内外の経営層にも女性を増やしていくと宣言し、自分たちを追い込みました。

 もちろん、目標を宣言するだけでは不十分です。2017年には、私が主導して開発したNEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN(NLW)を開催。これは、将来を期待されている女性社員に集まってもらい、約1年かけて成長してもらうためのプログラムです。

 NLWに加え、男性社員の意識改革も行ってきました。具体的には、男性管理職に自分の後継者を3名選出してもらい、そのうちの1〜2名を必ず女性にしてもらうというものです。それによって意識を変えてもらうと同時に、数値目標を実現できるよう取り組んでいます。

浜田:ありがとうございます。岡島さんは、株式会社プロノバでさまざまな企業を支援されていると思いますが、具体的にどのような活動なのか教えてください。

岡島悦子氏(以下岡島):私は主に、企業のサクセッション・プランニング(後継者育成計画)のコンサルティングをしています。そのなかで感じるのは、企業が成長を続けるために新しいビジネスモデルをつくり、次のイノベーションを起こしていく必要性です。イノベーションを創出するためには、それまでの成功モデルから脱却し、多様な視点を意思決定に反映できる経営チームをつくらなければなりません。そこで、2010年頃から計300社ほどの企業に対し、多様性を生かす経営を実現するために、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)のプログラムを実施しています。

 DE&Iを推進するためには、経営トップがコミットメントすると同時に、管理職層と社員個人という3つの階層が、三位一体で意識改革を行わなければ会社は変わりません。そのため、経営者、管理職、社員個人というそれぞれのレイヤーに合わせたプログラムも行っています。

 ジェンダーギャップは女性の問題だけではなく、企業にとっても大変重要なものです。選ばれる企業、イノベーションを起こせる企業になれるかどうかにも大きく関係します。今回のセッションを、「ジェンダーギャップは自分ごとだ」と捉えるきっかけにしてもらいたいですね。

福地敏行氏(以下福地):私は1985年に日本IBMに入社して以来、ずっと営業畑で働いてきました。生まれも育ちも、そして入社してから最初の20年もすべて大阪で過ごすという、実にドメスティックでローカルな人生だったのですが、2008年に役員になってから、ダイバーシティに携わるようになりました。

 社内の女性コミュニティや、LGBT+のコミュニティ、障がいのある学生を対象にした長期インターンシップ・プログラム「Access Blue」などのさまざまな取り組みで、関係者の方々と意見交換をしてきました。ダイバーシティに直接、深く触れながら、当事者の皆さんと活動してきたのです。今日はその経験を踏まえてお話しできればと思っています。