D&Iを社会の「当たり前」にするために

浜田:所属する会社や自分の上司がダイバーシティ&インクルージョンに対して理解がない場合、ボトムアップでできるアプローチはあるのでしょうか? セッションの参加者へのメッセージも合わせてお願いします。

魚谷:会社がD&Iに理解がないのであれば、その会社の社長と話す機会を私につくってほしいくらいです。トップが変われば、役員や管理職も変化する可能性が高まります。「D&Iは逆差別だ」と言う男性もいると思いますが、そもそもSDGsに掲げられている目標は「不平等をなくそう」ということだと理解してほしいですね。世界中に不平等があったからこそ、平等であることが当たり前の社会にしていこうとしているわけです。女性だけを特別扱いするのではありません。

 いずれ若い世代の方々が、企業の中心になっていきます。その頃には、グローバルな価値観が今より広まってくるでしょうし、ジェンダーの壁を乗り越えるなどと言っていること自体が不自然な社会になるはずです。私たちが今その基盤づくりをしているので、皆さんには「当たり前」として発展させてもらいたいですね。また、ダイバーシティに関しては、さまざまな視点が必要です。企業がグローバルに成長するためには、参画するステークホルダーの方々全員で知恵を出し合う必要があるのではないでしょうか。

岡島:ボトムアップで解決する方法は2つあります。1つは、時間の問題だと理解することです。異能な人たちを受け入れない会社は淘汰されていきますし、D&Iについていけない人たちも淘汰されていくはず。これは、企業がこれからの社会で存続していくために必要なことであり、必然なのです。2つ目は、ミドルマネジメント層が束になって「私たちが変わっていかなければ選ばれる会社になれない」と声を上げつづけていくことだと思います。

福地:私も魚谷さんと同じ気持ちです。その会社の社長と引き合わせていただきたい。しかし、いきなりトップ同士、というのは難しいかもしれませんが、もし、女性コミュニティがあるようなら、日本IBMの女性コミュニティと意見交換する場をつくってもいいと思っています。

 企業の文化風土を根づかせるためには、トップがメッセージを出すだけでは不十分。たとえば3月の国際女性デーにはジェンダーダイバーシティの話をする、6月のLGBTプライドマンスにはそれに関する自分の考えを紹介するなど、普段から社員全員がD&Iに触れる機会を意図的につくっていくことが重要です。

 ダイバーシティというのは、さまざまな人がいる「状態」であり「形」です。一方のインクルージョンは、さまざまな人がいることを受け入れてリスペクトする「振る舞い」や「心」。そのため、トップや管理職は、ダイバーシティよりもインクルージョンを追求すべきだと考えています。

浜田:ありがとうございました。セッションの参加者からも非常に多くのメッセージが寄せられました。特に女性が圧倒的に多かったですね。来年のONE JAPAN CONFERENCEでは、D&Iに興味がない男性にも広く聞いてもらえたらと思います。

ジェンダーギャップを乗り越えるために今すべきこととは――資生堂と日本IBMが取り組むD&Iセッション終了後の一コマ(デザイン:McCANN MILLENNIALS)