性別による「役割分担」が女性のキャリアを阻む
ジャーナリスト
1989年に朝日新聞社に入社。週刊朝日編集部を経て、1999年からAERA編集部。記者として女性の生き方や働く職場の問題、また国際ニュースなどを中心に取材。米同時多発テロやイラク戦争など䛿現地にて取材をする。その後、AERA初の女性編集長に就任。2017年3月末で朝日新聞社退社し、4月よりBusiness Insider Japan統括編集長に就任。2020年末に退任してフリーランスのジャーナリストに。著書に『働く女子と罪悪感』(集英社)。
岡島:女性管理職を増やそうとしたとき、1社だけでは進められないという点が非常に重要です。リーダー候補の女性と話をすると、普段からワンオペで家事や育児も担っている女性からは「仕事も家事も育児も、私1人でがんばらなければいけないということですか?」と言われることがあります。これは、女性のパートナー側の会社の仕組みも整っていなければ、解決できない問題です。「夫は仕事をし、妻は家庭を守るべき」という性別役割分担に反対する人を増やす活動を、会社を超えて越境的に行わなければならないと思っています。
浜田:LinkedInが働く女性にとった「あなたのキャリアを妨げているものは何ですか」というアンケートの回答は、上位3つが家庭内の事情でした。仕事と家庭の両立支援制度を充実させればさせるほど、それは女性が使う制度となってしまい、性別役割分担を固定化させかねません。すべての企業が制度を整えない限り、制度が整っている企業にフリーライドしてくる企業がありますよね。
福地:ダイバーシティの文化風土に関しても、まさにその通りだと思います。たとえば私たちは去年、男性の育児休暇取得率100%にするキャンペーンを実施しました。3日でも1週間でもいいからとにかく休暇を取ろう、と。その結果、約7割の男性が休暇を取ったのです。しかし、そのパートナーの女性の感想は、「出産してすぐの大変なときに夫が家にいて余計に大変でした」というものでした。私たちは、つい「制度があるなら100%を目指そう」と数値目標に走りがちですが、押し付けにならないよう現場を見て留意する必要があるのだと痛感しました。
浜田:女性がキャリアを積みたいと思っていても、配偶者の転勤などでキャリアを中断せざるを得ない場合があります。そのような問題に、企業としてソリューションを設けていらっしゃいますか?
魚谷:配偶者の方の転勤に合わせてロケーションを配慮することはあります。なるべくその人のキャリアを実現できるよう、制度的な面でサポートしていきます。しかし、制度面以上にターニングポイントで大きな不安を感じている方へのサポートも重要です。たとえばNLWでは、同じような経験を経て役員になった人たちに、どうやって乗り越えたのかを話してもらう機会をつくっています。また、それを聞いた人が実際に転機を迎えた際、いつでも相談できることも大切です。そのようなコミュニケーションの機会を増やしています。
福地:日本IBMも同様に、配偶者の転勤に合わせてロケーションを変更する制度があります。ただ、リモートワークが増えて、働き方・暮らし方が一変している今、本当に大切なのはDXとダイバーシティを進めることだと思うのです。コロナ禍で働くオプションが増えた今、時間と場所を問わずにさまざまな挑戦ができる絶好のチャンスではないでしょうか。
浜田:ある大企業の役員の方に聞くと、コロナ禍でリモートワークが定着したことによって、「管理職に挑戦してみたい」と手を挙げる女性が非常に増えたそうです。これは大きな変化だと思います。