4月9日午後、自民党山形県連の会合後、記者団の取材に答える自民党選対委員長の遠藤利明4月9日午後、自民党山形県連の会合後、記者団の取材に答える自民党選対委員長の遠藤利明 Photo:JIJI

「ここは1議席よりも将来の自民党政権の安定を目指すべきだ」。自民党の選挙戦全体の戦略・戦術に大きな影響力を持つ幹部の意向が実現しつつある。夏の参院選まで残すところ約2カ月。焦点の32ある改選1人区の一つ、山形選挙区の公認調整を巡り、自民党執行部は「不戦敗の選択」に向かうことになった。

 なぜ山形なのか。現職の舟山康江が国民民主党所属というのが最大の理由だ。舟山は6年前の参院選で自民党公認候補を大差で退け、今回も舟山の優勢が伝えられる。3年前の参院選も自民党公認候補が無所属候補に敗退しており、自民にとって山形選挙区は「連敗続きの鬼門の選挙区」(自民党幹部)。

 そこであえて勝負は避け、「国民民主に恩を売ることでもっと大きな果実を得る」(同)というわけだ。もちろん理由はある。きっかけは国民民主が2022年度政府予算案に賛成したことにある。予算案への賛成は一面で、野党勢力から離脱して与党勢力へ接近することを意味する。

 確かに国民民主の予算案賛成で自民を軸にした各党の位置関係が大きく変わった。これまで自公に最も近かった野党は日本維新の会。国会運営ではしばしば自民の補完勢力的な動きをしてきた。その自民・維新間に割って入る形になったのが国民民主だ。

 結果として野党共闘の軸になってきた立憲民主党が主導権を失い、混迷が続く。そのことだけでも自民党への強い追い風だが、山形選挙区の「不戦敗の選択」はさらに野党分断の流れを加速させる。