菅義偉前首相「勉強会」発足で政界の注目を集める菅義偉前首相 Photo by Masato Kato

夏の参議院選挙が4カ月後に迫る中、長期政権を目指す岸田文雄首相(自民党総裁)が警戒しているのは野党ではない。「一兵卒」にすぎない自民党所属の無派閥議員の動向だ。畏怖の対象となっている菅義偉前首相は、在任時に強力に推進した新型コロナウイルスのワクチン接種や不妊治療の支援策などを巡って再評価の動きがあり、いよいよ「勉強会」を立ち上げるタイミングを迎えている。最高権力者が最も恐れる男の再始動が意味するものとは――。(イトモス研究所所長 小倉健一)

菅義偉前首相が「勉強会」設立へ
政界がざわめく理由

 昨年10月の首相退任後、政界で目立った言動を控えていた菅義偉前首相が近く、自らに近い無派閥議員と「勉強会」を設立する。

 テーマは、脱炭素化社会の実現や霞が関改革など菅政権時代から注力してきたものだ。今の日本が克服すべき課題と未来を見据えて対応すべき問題に取り組む。政策ごとにメンバーが出入りするという、まさに「この指、とまれ」方式だ。

 首相在任時、新型コロナウイルス対策を「失敗」と岸田文雄首相らに批判され、内閣支持率の急落から半ば「菅おろし」に遭った菅前首相。だが、高い目標を掲げて強力に政策を推進する政治スタイルで、1年間に「ワクチン接種1日100万回達成」「携帯電話料金の大幅値下げ」などを次々と達成した突破力は政界随一といえる。

 小学校の1学級における児童数の上限を40人から35人へ引き下げたり、オンライン診療を解禁したりなど、国民が実感しやすい取り組みを進めるのも特徴的だ。一方で、宰相まで上り詰めた「剛腕」も持ち合わせており、それらは岸田首相から見れば畏怖の対象になる。

 非主流派に転じた人物の「勉強会」立ち上げは、「単に勉強するだけの場なのか、倒閣につながるリスクがあるものなのかは注視すべき」(首相周辺)というわけである。