小野寺五典・衆議院議員・元防衛相Photo by Toshiaki Usami

ロシアのウクライナへの軍事侵攻から24日で1カ月がたった。双方の停戦交渉や米・バイデン大統領、独仏首脳らとプーチン大統領との折衝が続くが、首都キエフの制圧を目指すロシア軍は欧米からの武器援助を受けたウクライナ軍の激しい抵抗に遭っている。核を持つ超大国の一方的な軍事侵略は世界に衝撃を与えただけでなく、対ロ経済制裁の実施で世界経済はエネルギー価格の上昇や貿易や金融取引でのロシア排除が進み、ブロック経済化、「第二の冷戦」が現実味を帯びる。今回の軍事侵攻をどう受け止め、日本は何を教訓にすべきなのか。『混迷ウクライナ』の#18では、外交・安全保障の課題を小野寺五典・元防衛相に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部特任編集委員 西井泰之)

いまだ不可解、なぜ今軍事侵攻か
国際社会からの孤立の代償は大きい

――ロシアは当初、短期間にキエフを制圧できると踏んでいたようですが1カ月がたち泥沼の様相です。一方でコロナ禍からの回復軌道に乗り始めた世界経済は対ロ制裁の実施でエネルギー価格が急騰するなど、再び先行きが見えなくなりました。

 2014年にロシアがクリミアを併合したときには、情報戦で混乱させ親ロ派勢力に議会を占拠させて住民投票を一方的に実施させるなど、ハイブリッド戦による、いわば静かなる攻撃で国際社会が行動する余地を与えないまま、あっという間にやってしまった。他国を支配しようとするなら、こうしたやり方が理想なのだろうと思う。

 ところが今回はまったく逆で、あらかじめ国境近くに大規模なロシア軍を集結させて演習を繰り返した末での侵攻だった。多くの国は、ロシアがウクライナの譲歩を引き出すため、軍事力による威嚇を交渉の一つのツールとして使っていると思ったわけだ。捕虜になったロシア軍の兵士の話でも彼ら自身も演習だと思っていたという。事前に一貫した侵攻の戦略が練られていたとは思えない。

 このタイミングで軍事侵攻をした意味は今でも不可解だ。

 プーチン大統領は、NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大の脅威を言っているが、NATOが直近、そういう動きをしたわけではないし、ウクライナ自身も国内で紛争がある国はNATOに加盟できないことはわかっている。ロシアが経済制裁や国際社会から孤立といった高い代償を払ってやる意味があるのか、ロシア政府内でも軍事侵攻がマイナスだと判断している人は少なくないと思う。

――プーチン大統領にいくつかの誤算があったという見方もあります。