総事業規模が56兆8000億円、国の財政支出が15兆4000億円となる過去最大の追加経済対策がまとまった。金額自体は、そもそも国際的にGDP対比で2%程度の財政出動をしようという話があったので(日本で2%といえばちょうど10兆円ぐらい)、それに更に積み増しした目標数字が初めにあって、それに向かっていろいろなものを積み上げたのだろう。現在の状況下で金融緩和と共に財政的措置を取ること自体は適切だし、経済の落ち込みの大きさを考えると規模に違和感はない。大きな金額の対策を比較的短期間でまとめたことは評価していい。しかし、一般論だが、率直に言って、これほど大きな額を有効に使うのは難しい。支出の中身を個々に検討する必要があろう。

 個々の政策への評価の基準は、筆者は三つあると考えている。第一に、公共性だ。この点については、定額給付金や減税を思い浮かべると分かりやすい。今お金が配られても、後から増税されて取り立てられれば(つまり同じ人に支出されて、同じ人から回収されれば)、国民の損得勘定は基本的にプラスマイナスはゼロだ(厳密には手間がかかっている分だけ、マイナスかもしれない)。したがって、国民の皆がメリットを得られるような公共性(公共事業として行う必然性)がなければ、財政支出を行う意味がなく、これは減税に劣る。第二は、所得配分上のフェアネスだ。メリットを受ける人や業界に偏りはないかという点と、あまり行き過ぎてもいけないが、不況が深刻化している状況を考えると、豊かな人よりも経済的に困窮している人に対してサポートになっているかどうかを見定める必要がある。そして、第三は、将来の経済力の発展(成長性)につながるものであるかどうかだ。

 では、この三つの基準に照らして、追加経済対策の中身をざっと眺めてみたい。

 まず今一番の問題である雇用対策については、2兆5000億円の事業費が用意された。急激な世の中の変化の中で、雇用に多くの支出を振り向けたという点は、ある程度の公共性と配分のフェアネスという意味では評価できよう。

 たとえば、企業が従業員に支払う休業手当の一部を国が支援する雇用調整助成金の拡充が盛り込まれた。日経新聞の報道(4月11日朝刊4面)を引用すると、財源は6000億円で、休業手当に対する助成率を大企業で従来の3分の2から4分の3に、中小企業で80%から90%に引き上げるという。日本型のワークシェアリングもこの助成金で後押しする(企業が労働時間を削減しながら、派遣社員や契約社員を解雇せずに雇い続けた場合、1人あたり最大45万円を助成する)というが、これらの政策は、一種の社会的な保険に等しいので、国がこれを行う公共性が多少あると思う。また、所得の再配分と言う意味でも、困った人への分配となっている。もっとも、企業が現状の余剰労働力を抱え続けることを前提としているので、将来の成長性という意味ではマイナスといえよう。