アフリカ南部に位置するジンバブエが、日本円を九つある法定通貨の一つに採用した。もしあなたがジンバブエからビクトリア滝を見に行くなら、ホテルや観光業者への支払いは、形式上は円でできることになる。しかし、以下に見るように実際そうなるかは今は不明である。

 昨年12月にジンバブエ準備銀行のゴノ総裁が10年の任期を終えて退任した。ムガベ大統領や与党関係者は彼の業績を称賛した。しかし、同国のSWラジオ・アフリカは、「ゴノはカミカゼ金融政策で、国民に前代未聞の苦痛を与えた」と激しく批判した。

 ジンバブエは2008年に天文学的ハイパーインフレに見舞われた。米ジョンズ・ホプキンス大学のS・H・ハンケ教授によると、物価は24.7時間で100%上昇した。失業率は80%に達したという推計もある。中央銀行は政府に言われるがままに紙幣を刷って財政赤字を補った。100兆ドル札も登場した。典型的なマネタイゼーションによる経済破綻だった。

 09年1月にゴノ総裁は、国民に信用されなくなったジンバブエ・ドルを廃止し、マルチ・カレンシー制度を宣言する。五つの通貨(米ドル、ユーロ、英ポンド、南アフリカ・ランド、ボツワナ・プラ)の流通が認められた。