1万人以上のデータが教えてくれること

私はメガネのJINS(ジンズ)という会社で、JINS MEMEという集中力を測るメガネの技術開発・事業開発から、その研究を推進してきました。
生理データの読み解きは、心理学や脳神経科学、眼科などの大学教授と、働き方などに関しては、経営学や社会科学などの領域の大学教授や民間の研究所との共同研究をおこなってきました。

そして最近では、「そのデータを基にどんな環境を整えると人が集中して、気持ちよく働けるか」ということを空間設計に落とし込み、体験価値を提供していく、株式会社Think Lab(シンクラボ)の取締役をしています。

私には「研究を基にした定量的観測」のデータを持っていることと、リアルな職場での「実践的な働き方改革施策の巧拙」を見てきたという、2つの強みがあります。
延べ1万人以上の集中度のデータを見ながら、先進的な取り組みを続ける人事・総務の方々との議論の中で、多くの施策を試し、研究もしてきました。

その集大成として本書を執筆しました。

深い集中を取り戻せ 告知情報『深い集中を取り戻せ』(ダイヤモンド社)

「深い集中」は幸福感を生む

集中に関する研究で有名なのは、心理学者のミハイ・チクセントミハイの研究で、集中の極致と言える「フロー体験」というものが定義されています。
時間を忘れるほどの集中(フロー体験)によって、人はえも言われぬ高揚感を得られ、それだけで幸せを感じるのです。
フロー体験の研究は、「人類の3つ目の幸せを見つけた研究だ」とも言われます。

誰しも子どもの頃は時間を忘れて何かに没頭して、楽しくてしょうがない時間を過ごしたことがあるでしょう。
大人になってからも、自発的にやっている趣味や仕事の時間は、気づいたらあっという間に時間が過ぎていることがあります。
そんなときは、目的がなくても幸せを感じていることでしょう。

誰かと比べなくても、自分が目の前のことに没頭できていれば、それだけで幸福を感じることができます。だから、集中は、他者との比較から逃れ、自分が幸せになるために必要不可欠な能力のベーススキルです
ただ、ここで問題なのが、時間を忘れるような幸せな時間を過ごすための「集中する力」が落ちているという事実なのです。

深い集中を取り戻せ 告知情報

「集中=幸福」が脅かされる時代

2020年の新型コロナウイルス騒動が引き金となった働き方の変化によって、我々の集中力のさらに「根っこの部分」が揺らぐ時代に入りました。
リモートワークや環境の変化により、集中できないことへの対応が避けて通れない時代になったのです。
それ以前の働き方を振り返ると、次のようなものでした。

全員が9時にオフィスに出社し、11分に1回は同僚と話しかけ合いながら、仕事内容を擦り合わせて進めていく。

そんなオフィスワークが当たり前でした。
しかし、これからは確実に、すべての組織がこれまでとは違う速度で変化していくでしょう。
これからの時代は、たとえ消極的であれ、働き方そのものを選択しないといけないのは間違いありません。

「自由と引き換えに、誰も正しさを決めてくれない時代」に入り、それとどう向き合っていくべきなのかが大事になってきたのです。

本書では、こうした自由が爆発的に膨脹し始めた時代に大きな課題となる、

・集中の勝ち取り方
・自由を自ら作り、働くためのスタンス

を、生理データの検証や先人たちへのインタビュー内容を交えて、できるだけ「すぐに今日から実践できること」として紹介していきます。

深い集中を取り戻せ 告知情報

本書の主な内容

序章 「1つのこと」に集中するための考え方
──個人のスタンスと最重要キーワードの整理

誰もが「集中」のことを考えた瞬間
今やっている仕事に「意義」はあるか
集中を取り戻すための「3つのキーワード」
キーワード1 「集中力の要素分解」立ち上げ・深さ・持続力
キーワード2 「3つの脳の切り替え」理性・直感・大局観
キーワード3 「時間管理の基本戦略」ワーク・セルフ・リレーション
働く場所の「将来」を考える
どこでも働くし、どこでも遊ぶ時代
「1人での集中時間」をどこで過ごすか
人や会社とどう付き合っていけばいいのか

第1章 「深い集中」を取り戻す
──「個人が今すぐ変えられること」からはじめる

「集中」は個人の責任になる
「周辺の環境」を整える
脳のモードを切り替える「環境づくり」
「五感を活性化させる刺激」を与える
仕事の最初と最後の「ルーティン」をつくる
「クリエイティビティ」を取り戻す

第2章 「1人で集中できる場所」を取り戻す
──「いつ、どこで働けばいいのか」を決める

どこで働いてもいい時代
何が「いらないもの」になったのか
ソロワークの戦略
「集中できる時間」を死守する戦略
職場で起こる「メンタルの問題」に向き合う
ソロワークの「時間サイクル」
コワーク(会議室)の戦略
その会議、相手や参加者は「誰」なのか?
その会議、どんな「内容」なのか?

第3章 「夢中で働く自分」を取り戻す
──「誰と何をやるか」を問い直す

「個人の独創」がマストな時代
「企業内起業家」という生き方
働き方の「スタイル」を再確認する
「誰とどのように働くのか」の戦略
思わぬ影響を受ける「人間関係」の戦略
「なぜやるか、何をやるか」を決める戦略
「Live your Life」を手に入れよう

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