リモートで起こる「雑談不足」の解消法Photo: Adobe Stock

集中力が落ちた。
あの頃は、もっと没頭できたのに──

私たちは今、スマホやPCに1日平均11時間を費やしていたり、リモートワークによる働き方の変化に追われていたりします。
「人のパフォーマンスを可視化するメガネ型デバイス JINS MEME」「世界で一番集中できる空間 Think Lab」などを手掛けてきた井上一鷹氏の著書『深い集中を取り戻せ』では、集中のプロとして、「これからどのように働けばいいのか」「どうやってパフォーマンスをあげるのか」を語ります。
脳科学的に、「やらされ仕事は4ヵ月しか続かないけれど、やりたいことは4年続く」と言われます。あなたが、夢中で何かに没頭できた体験。やらされ仕事ではなく、自らやってみようと思えたこと。何が原因かわからないけど、いつの間にか、『深い集中』が失われたすべての人へ、ノウハウをお伝えします。

「雑談」が足りていない問題

 リモートワークをしていると、どうしても「目的のない雑談」が少なくなります。

 ビフォアコロナの時点でも、飲み会が減ったり、喫煙所が撤去されたりすることで、雑談の場がなくなっている課題がありました。

 早稲田大学ビジネススクールの入山章栄先生が引用されている「両利きの経営」という考え方の中で、次のようなことが語られています。

 “イノベーションを起こすためには、「知の探索」と「知の深化」の2つが必要である。知の範囲を広げ(知の探索)、一定分野で知を継続して深める(知の深化)。その2つの因子を高めていくことで、イノベーションを起こせる可能性が上がる。”

 ここで議論されているのは、日本企業は内製化になりがちで、「知の探索」が不足しており、多様な価値観や考え方と触れることが少なく、失われた10年以降、イノベーションが起こらなくなってきている、という話です。

 セレンディピティもそうですが、まったくのゼロからイチが生まれることはほとんどなく、複数の既知の知識や知恵が掛け合わさったときにイノベーションは起こります。

 日本企業を含め、日本人は個人においても「知の探索」のほうが不足しています。

 ここでできる解決策は、「よく話す人と、意図的に雑談の時間を作る」と「まったく話したことない人と話す機会を増やす」の2つです。

 この1ヵ月の間に、チーム内で雑談したでしょうか。あるいは、新しく出会った人がいたでしょうか。

 これらは、ただ待っていてもクリアできることではありません。自分から主体的にやっているかどうかで、どんどん差がついていきます。

 雑談するためには、流行りのリモート飲み会でもいいですし、朝礼・夕礼をおこなうといいでしょう。そこで私は、「最初の3分は、できるだけ本題と関係ない小話」をするように、ネタを用意して臨んでいます。

 一時期、コワーキングスペースという言葉がよく聞かれ、WeWorkなどが働き方を提唱していましたが、これも、先ほどの「知の探索」を狙った動きでしょう。

 多様な企業が同じスペースで仕事をすることで、イノベーションが起こる確率が上がることが期待できます。

 ところが在宅勤務になることで、より一層、同じ人だけとの会話になってしまい、しかも雑談的なコミュニケーションがなくなってしまいます。

 そうならないために、戦略的にコミュニケーションするようにしましょう。

井上一鷹(いのうえ・かずたか)
株式会社ジンズ執行役員 事業戦略本部エグゼクティブディレクター 兼 株式会社Think Lab取締役
NewsPicksプロピッカー(キャリア)
大学卒業後、戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトルにて大手製造業を中心とした事業戦略、技術経営戦略、人事組織戦略の立案に従事後、ジンズに入社。商品企画部、JINS MEME事業部、Think Labプロジェクト兼任。算数オリンピックではアジア4位になったこともある。
著書『深い集中を取り戻せ』(ダイヤモンド社)が好評発売中。