荒井寿光
バイデン新政権は同盟国や民主主義国と連携して圧力をかけるなど、トランプ政権とは異なるアプローチで中国の封じ込めやデカップリングを進めるとみられる。とりわけハイテク摩擦は一段と激化する恐れがある。

コロナショックでグローバル化のリスクが再認識されたが、外国政府の政治的意図で引き起こされる「政治リスク」が一段と強まる。米中「新冷戦」のもと対策は喫緊の課題だ。

コロナ後、米中の覇権争いは中国が有利に進む情勢で米国のGDPを追い抜く時期も早まる可能性がある。だが米中も含めて各国は当面は自国問題に忙殺され、国際協調や連携がなくなる「世界政治の空洞化」が懸念される。

コロナ感染防止を各国が「戦争」として戦時体制並みの措置を取る中で、輸入依存によるマスク不足を見ても、日本の「医療安全保障」は弱い。行動基準などを定める感染症対策基本法作りや医療自給率向上の政策が必要だ。

世界一の特許大国だった日本が米中に大きく差をつけられたのは独自開発を軽視するなどの日本企業の特許戦略の失敗が大きい。国際競争力を立て直すには「特許敗戦」の教訓を生かし発明家ベンチャーを育てることだ。

ファーウェイへの米国政府の強硬姿勢は「米中知財戦争」の象徴だが、知財戦略は今や経済力だけでなく軍事力や世界の覇権を制する鍵だ。せめぎ合いは激化するし、どちらが勝つのかも見えない。

三菱電機、NECへのサイバー攻撃で露呈した防衛体制の「徒手空拳」
三菱電機やNECへのサイバー攻撃は、軍主体のサイバー戦争の時代に、民間企業が自らのシステムを守らないといけない日本の無力ぶりを露呈した。官民一体の防衛体制の整備が急務だ。
