松田晋吾
note解剖#8
2022年12月の上場から3年余りで時価総額を約10倍に伸ばしたnote。さらに米グーグルや韓国ネイバー、KADOKAWAとの資本業務提携と、大型アライアンスが相次ぐ。生成AIの台頭がメディア産業の収益モデルを根底から揺さぶる中、noteはクリエイターへの対価還元の仕組み作りにも奔走する。「ネット上の本拠地」というコンセプトを掲げ、個人から大企業、官公庁まであらゆる発信者の基盤を目指す同社の加藤貞顕代表取締役CEOに、編集者の知見が切り拓くメディアの生存戦略を聞いた。

note解剖#7
年間売り上げ1515万円に達するトップ1000人のnoterたち。会社員が実践知を売買する市場は活況を呈するが、その裏では「稼げるノウハウ」をうたい欲をあおる不透明なコンテンツがまん延している。有名アカウントが突如停止されるなど、運営側と「情報商材屋」のいたちごっこが続く中、情報の質を担保できなければプラットフォームの信頼は砂上の楼閣と化す。

note解剖#6
プラットフォーム運営を主軸としてきたnoteが、2024年5月に設立した完全子会社Tales & Co.(テイルズ・アンド・コー)を通じて「編集者機能」を持ち、クリエイターの発掘からメディア展開までを担うIP(知的財産権)事業へと踏み出した。それは出版社など既存メディアの競合となり得ることを意味する。コンテンツ強者がひしめく中で、後発となるビジネスでいかに勝ち筋を見いだすのか。その真価が問われている。

note解剖#5
検索ユーザーがサイトへ遷移しなくなる「ゼロクリック問題」でメディアが沈む中、noteはAI経由の流入で「想定の4倍」という驚異的な数字をたたき出した。加藤貞顕CEO(最高経営責任者)が東京大学の松尾・岩澤研究室(松尾研)で学んだAI戦略が結実した格好だが、アルゴリズムというブラックボックスに依存する構造は、常に「はしごを外される」リスクと隣り合わせだ。業界を主導する対価還元プロジェクトの勝算を問う。

note解剖#4
米グーグルや韓国ネイバーとの異例の資本提携で独自の資本戦略を貫くnote。その快進撃の裏では、生成AIの学習に不可欠な「日本人の思考や経験」という膨大なデータが外資ビッグテックに相対的に安価な対価で開放されることへの懸念が強く、日本の知財利権を空洞化させかねない「データ争奪戦」のリスクも浮かび上がる。

note解剖#3
財務省が新たな発信ツールとしてnoteの活用を始めるなど、法人や官公庁の参入が相次ぐ一方、更新が途絶え放置される企業アカウントの「死屍累々」とした現状も浮かび上がっており、月額8万円の「note pro」の導入をためらう企業も多い。博報堂など大手広告代理店も参入し拡大を続ける「note経済圏」は、単なる一過性の流行を超えて持続可能なビジネスインフラとして定着できるのか、その真価が問われている。

note解剖#2
オールドメディアからの収入が先細る中、「noteが柱の一つになった」。そう語る料理研究家・大原千鶴さん。手数料を抑え、売り上げの8割超を還元する「クリエイターファースト」のnoteのモデルが多くの書き手に受け入れられる一方、実際に収益を得られたユーザーは全体の数パーセントにすぎない。プラットフォームとして「誰もが稼げる場」であり続けるための治安維持と仕組み作りの葛藤が続いている。

note解剖#1
noteが売上高、利益共に過去最高を更新し、投資回収フェーズへの突入を宣言した。広告を排し、読者がクリエイターに直接課金する手数料モデルで「情報のインフラ」を標榜するが、市場が危惧するのはかつての覇者、mixiがたどった急減速の再来だ。X(旧Twitter)の長文参入など競合の影が差す中、note経営陣が描く「ストック型ビジネス」の持続性を検証する。

note解剖 INDEX
新・情報インフラ「note」巨大化の光と影、グーグルやオールドメディアに一般企業も入り乱れる「1000万人経済圏」の正体
メディアの凋落が叫ばれる中、彗星のごとく現れた「note」が情報の生態系を塗り替えつつある。広告に頼らず、クリエーターが読者から直接対価を得る独自のモデルは、大手企業や省庁までもが参入する巨大インフラへと膨張している。しかし、その快進撃の裏には、参入障壁の低さや肥大化に伴う質の低下といったアキレス腱も潜む。noteは新たな情報インフラとして定着するのか、それとも歴史の波に消える一過性の熱狂にすぎないのか――。メディア興亡の最前線を追う。

#2
東証グロース上場のSAAFホールディングスを巡る経営権争いが、泥沼の委任状争奪戦へと発展している。創業者で元社長の前俊守氏は「現経営陣に会社を乗っ取られた」と主張。これに対し現体制を率いる左奈田直幸社長が取材に応じ、「コンプライアンス意識が欠けていると、創業者でも上場企業の経営を続けることは難しい」と反論した。不透明な投資家グループによる「ウルフパック戦術」の実態を激白し、新体制の正当性を強調した。

地域新聞社 上場廃止危機に挑む1000日#6
部数減、広告低迷……。メディアに逆風が吹く中、地域新聞社の細谷佳津年社長は「メディア事業そのものに強みがある」と断言する。CFO出身の投資家視点で見抜いた、紙媒体が長年培ってきた物流網や読者データの真価とは。ウルフパックとの攻防という激流の中にありながら、メディアの持つ潜在的なアセットをいかに再定義し、新たなビジネスへとつなげられるのか。細谷社長に聞いた。

地域新聞社 上場廃止危機に挑む1000日#5
「紙媒体のフリーペーパー発行会社」からの脱却を掲げ、事業構造の転換を進める地域新聞社。紙媒体の発行で培ってきた配布網や読者データをアセット(資産)と位置付け、M&Aや生成AI関連など、従来とは異なる新規事業を次々と打ち出している。もっとも、こうした分野はいずれも社内に前例がなく、ノウハウも乏しい。そこで同社が選んだのが、外部の専門知見を経営に組み込む戦略だ。リスク管理、生成AI、マーケティングなど、ビジネスの第一線で活躍する6人の専門家で構成するアドバイザリーボードを設置し、新規事業推進のエンジンとして活用している。

地域新聞社 上場廃止危機に挑む1000日#4
「これまで株主を意識したことはなかった」。そんな組織が、上場廃止の危機を前に激変した。CFO出身の細谷佳津年社長のもと新設されたIR部署は、メディア企業ならではの編集力を武器に、投資家との対話を開始。投稿サイト「note」での本音の発信や、驚異の利回り158%をたたき出す破格の株主優待をテコに、株主数は1年半で2.5倍に急増した。地元の愛読者を「株主」に変え、時価総額40億円への突破口を開く――。知られざる「伝えるプロ」たちの資本市場サバイバル術を明らかにする。

地域新聞社 上場廃止危機に挑む1000日#3
地域新聞社は2025年4月、新たなビジネスモデルとして「地域共創プラットフォーム」構想を発表した。千葉県を中心とする地場企業の買収対価として自社株を交付し、非上場企業のオーナーに「上場株の流動性」を提供するスキームだ。地域密着型メディアとして築いたネットワークと上場地位を掛け合わせた点が注目を集め、千葉銀行や福岡市との連携など全国的な広がりを見せる。しかし、26年8月の上場維持期限が迫る中、案件の進捗遅れやウルフパック問題の影が投資家の期待に冷や水を浴びせた。地域の事業承継問題も解決し得る挑戦は、時価総額40億円への突破口となるか。その取り組みに迫る。

地域新聞社 上場廃止危機に挑む1000日#2
東証グロース市場で2024年2月、時価総額ランキングの最下位に沈んでいた地域新聞社。千葉・茨城を地盤に紙のフリーペーパー『ちいき新聞』を配布するビジネスモデルは、投資家から見放されていた。しかし新たに就任した細谷佳津年社長は、毎週174万世帯に届く物流網と地域との接点を、最強の「アセット(資産)」と再定義。M&Aや生成AI関連など新規事業を次々と打ち出し、時価総額は1年で約4倍の30億円まで押し上げた。上場維持基準である時価総額40億円の期限まで残りわずか。紙メディアの逆襲、その勝算に迫る。

地域新聞社 上場廃止危機に挑む1000日#1
2024年初頭、千葉・茨城でフリーペーパー「ちいき新聞」を配布する地域新聞社は、東証グロース市場で時価総額最下位に沈んでいた。紙媒体、しかも地域限定。投資家の目に、このビジネスモデルは将来性を欠くものと映っていた。24年2月に社長に就任した細谷佳津年氏は、経営戦略を大きく転換し上場維持基準の時価総額40億円達成を目指す。その期限は、26年8月。就任から期限まで約1000日のカウントダウンが始まった。一方、水面下では同社の経営権奪取を狙い、複数の投資家がひそかに株式を買い進めていた――。紙の地域メディアは経営を立て直し、上場を守り抜けるのか。地域新聞社の1000日に密着する。
