株主対策を説明する五十嵐正吾執行役員 Photo by Shingo Matsuda
「これまで株主を意識したことはなかった」。そんな組織が、上場廃止の危機を前に激変した。CFO出身の細谷佳津年社長のもと新設されたIR部署は、メディア企業ならではの編集力を武器に、投資家との対話を開始。投稿サイト「note」での本音の発信や、驚異の利回り158%をたたき出す破格の株主優待をテコに、株主数は1年半で2.5倍に急増した。地元の愛読者を「株主」に変え、時価総額40億円への突破口を開く――。長期連載『メディア興亡』内の特集『地域新聞社 上場廃止危機に挑む1000日』では複数回にわたり、地域新聞社の1000日に密着。第4回の本稿で、知られざる「伝えるプロ」たちの資本市場サバイバル術を明らかにする。(フリーライター 松田晋吾)
編集長がつづる「心に刺さるIR」
内製サイトで伝える地域の日常
IRサイトを開くと、帆船が穏やかな水面を進み、やがて大海原へと向かう映像から始まる。途中には田畑で作業に汗を流す人々や、オフィスで働くビジネスパーソンの姿が差し込まれる。地域新聞社が2025年2月に開設したIRサイトは、地域の日常と企業活動が伝わる構成となっている。
サイト内には、これまでの取り組みや成果、成長戦略がデザイン性高く配置されている。一般に硬くなりがちなリリース文は、ちいき新聞の編集長が担当し、感情にも訴えかける文章に仕立てた。株主からは「見やすい」と評価する声が上がっているという。
コーポレートコミュニケーション室長の五十嵐正吾執行役員は「フリーペーパーを自社で制作してきたため、デザインや動画制作に詳しい社員がいる。株主に分かりやすく伝えることを重視し、IRサイトはすべて内製した」と話す。メディア企業としての強みを、IRの領域にそのまま持ち込んだ形だ。
営業畑から突如IR担当に指名された五十嵐氏は、社長直伝の特訓を経て、資本市場の荒波へ飛び込んだ。次ページでは、投資家を驚かせた「本音のnote連載」の舞台裏と、機関投資家すら注目し始めた地域新聞社の“真の価値”を解き明かす。







