地域新聞社本社の受付で時価総額の金額を更新する社員 Photo by Shingo Matsuda
東証グロース市場で2024年2月、時価総額ランキングの最下位に沈んでいた地域新聞社。千葉・茨城を地盤に紙のフリーペーパー『ちいき新聞』を配布するビジネスモデルは、投資家から見放されていた。しかし新たに就任した細谷佳津年社長は、毎週174万世帯に届く物流網と地域との接点を、最強の「アセット(資産)」と再定義。M&Aや生成AI関連など新規事業を次々と打ち出し、時価総額は1年で約4倍の30億円まで押し上げた。しかし上場維持基準である時価総額40億円の期限まで残りわずかだ。長期連載『メディア興亡』内の特集『地域新聞社 上場廃止危機に挑む1000日』では複数回にわたり、地域新聞社の1000日に密着する。第2回の本稿では、紙メディアの逆襲、その勝算に迫る。(フリーライター 松田晋吾)
174万世帯を握る物流網
「紙」を最強のアセットへ再定義
2025年12月の年の瀬、千葉県北西部の白井市。寒空の下、配布員である「ポスメイト」の女性が、一軒一軒、住宅のポストに地域情報紙『ちいき新聞』を投函していた。
担当エリアは615部。毎週、折り込みチラシを差し込み、全ての住宅に配布する。女性はかつて全国紙の販売店で勤務していたが、「全国紙では数軒に一軒という感覚だったが、ちいき新聞はほぼ全ての住宅に配布するので最初は驚いた」と話す。配布先の住民と世間話を交わすことも珍しくない。「地域の人とつながっている」と感じている。
ポストにちいき新聞を投函するポスメイト Photo by S.M.
ちいき新聞は千葉県39版、茨城県1版の計40版を展開。地域のイベント、文化、スポーツなど、生活圏に密着した情報を掲載する。
千葉県八千代市の配送センターでは、約174万部の新聞と折り込みチラシを仕分け・梱包。毎週、約2500人のポスメイトが各家庭に届ける。ターゲットエリア内の全世帯のうち、ちいき新聞が届く割合は90%を誇り、全国紙の30%を大きく上回る。
この事業の主な収益源は、紙面に掲載する広告枠の販売だ。広告主はカバーエリア全域を対象にした広告から地域を限定したピンポイントの広告まで、対象エリアを柔軟に設定できることが大きな特徴である。
25年8月期の売上高に占める広告関連事業の割合は94%。フリーペーパー発行と折り込み配布が、今なお中核事業である。
だが、かつて市場はこのモデルを「将来性なし」と断じた。時価総額はグロース市場で最下位。そこからいかにして30億円を超える評価を奪い返したのか。次ページでは、不動産金融のプロから転身した細谷社長が断行した、驚愕の「アセット再定義」の全貌を明かす。







