インタビューに応じる細谷社長 Photo by Shingo Matsuda
部数減、広告低迷……。メディアに逆風が吹く中、地域新聞社の細谷佳津年社長は「メディア事業そのものに強みがある」と断言する。CFO出身の投資家視点で見抜いた、紙媒体が長年培ってきた物流網や読者データの真価とは。ウルフパックとの攻防という激流の中にありながら、メディアの持つ潜在的なアセットをいかに再定義し、新たなビジネスへとつなげられるのか。長期連載『メディア興亡』内の特集『地域新聞社 上場廃止危機に挑む1000日』では複数回にわたり、地域新聞社の1000日に密着。第6回の本稿で、上場維持のシナリオやメディア再生のヒントについて細谷社長に聞いた。(聞き手/フリーライター 松田晋吾)
ウルフパックへの買収防衛策を発動へ
認定株主の買い増しに独立委が協調認定
――ウルフパック問題について、1月15日に独立委員会が一部株主の共同協調行為を認定しました。共同協調行為が認定された株主によるさらなる買い増しを受け、買収防衛策の発動に踏み切るのでしょうか。
ウルフ(一部株主)側は2025年11月開催の株主総会で地域新聞社を乗っ取ることがメインシナリオだったはずです。しかし、当社が事前に準備して対策をしたことで跳ね返しました。買収防衛策を事前に導入している企業にウルフパックを仕掛けてくるのは国内初の事例です。
買収防衛策は近く発動します。発動の要件を満たしており、今回のケースは取締役会で決議できます。
――しかしウルフパックにより経営権を奪われた三ッ星が発動した買収防衛策を裁判所が22年に差し止めた事例があります。
地域新聞社は事前警告型の防衛策を導入し、さらに独立委員会が複数の投資家の共同協調行為を事実認定しています。この状況で発動して裁判所に差し止められたら、何のための買収防衛策なのか。実務上の他の法的論点もクリアできています。
――ウルフ側の最新の動きは。
他の上場企業がウルフパックを仕掛けられており、その企業の経営陣から対応方法の相談を受けています。株主を調べると半分程度が地域新聞社のウルフパックに関わっている株主と重なっています。
彼らはビジネスに興味があるのではなく上場企業という箱が欲しいので目先が移るのでしょう。現在は、地域新聞社に第2ラウンドを仕掛けてくるのか、ターゲットを他の会社に移すのかを両てんびんかけていると思います。
――地域新聞社はウルフパックの件について、IR(投資家向け情報提供)で積極的に発信していました。その意図は何でしょうか。
地域新聞社の独立委員会で協調関係が認定された個人名や企業は公開されています。ウルフパックは互いに他人のふりをするのが大前提ですが、それが難しくなりました。まさにそれが狙いでした。
ウルフパックはほとんどのケースで会社乗っ取りに成功しています。ただ、株主総会日に経営権を奪取した後はウルフ側が経営陣となるので会社からリリースされることもありません。だからわれわれは世の中に知ってもらおうとオープンにしました。
今回のケースは関係者の名前も含めて公表しましたので、抑止力は大きいと考えています。証券取引等監視委員会や警察とも連携をしています。
ウルフパックの手法は、互いに「他人のふり」をして株式を買い集める点にある。これに対し地域新聞社は、独立委員会による事実認定や関係者の実名公表に踏み切ることで、水面下の動きを白日の下にさらす抑止策を講じた。しかし防御に要するコストは膨大で、決算への影響は避けられない。ウルフパックとの第2ラウンドをにらみつつ、上場維持とメディア価値の再構築に向けた次の一手を、細谷社長が次ページで明かす。







