フレデリック・ハーズバーグ ハーズバーグは従業員にモチベーションを与える「動機づけ―衛生理論」(「二要因理論」とも呼ばれる)で最もよく知られている。

 彼はKITA(Kick In The Ass:尻を蹴飛ばせ)という語を考案し、プラスのモチベーション要因が仕事内容に組み込まれていく過程を表わす「仕事の充実化」という語もつくり出した。

 ハーズバーグの研究は職場における個人や個人の勤務態度に的を絞っているが、マネジメントの知識や専門技術の重要性も強調しておりマネジャーのあいだでも人気が高い。

人生と業績

 フレデリック・ハーズバーグ(1923―2000年)はアメリカの臨床心理学者で、モチベーションの性質と人をやる気にさせる最も効果的な方法の研究によって、影響力のあるマネジメントの思想家となった。彼を心理学の道に進ませた「メンタルヘルスに対する一方ならぬ関心」は、「メンタルヘルスはわれわれの時代の中核的な課題である」という信念から生じた。この信念は、第2次世界大戦で解放直後のダッハウ強制収容所に配属された従軍体験によって刺激を受け形成された。彼はアメリカに戻ると公衆衛生局で働き、その後は学究生活に入った。彼の「動機づけ―衛生理論」は1959年に刊行された『作業動機の心理学』(The Motivation to Work)で発表された。1972年から引退するまで、ユタ大学の経営学部に勤務した。

思想のポイント

 ハーズバーグの名を上げた「動機づけ―衛生理論」(もしくは「二要因理論」)は、1950年代後半にピッツバーグで200人の技術者と会計士を対象に行なった研究から生まれた。

 彼は被験者たちに仕事に満足感を覚えたときを思い出してもらい、なぜそのようなポジティブな感情を抱いたのか、そしてそのような感情が仕事の業績と仕事以外の生活の両方にどのような影響を及ぼしたのかを質問した。次の質問では、仕事上の経験がネガティブな感情につながったときを思い出してもらった。ハーズバーグは、回答者が仕事で満足だったと答えた要因は、不満をもたらした要因の逆ではなくまったく別のものだという事実に衝撃を受けた。このことから、彼は仕事には2つの要因があると結論づけた。

 ハーズバーグはまず、人間の欲求には2種類あると仮定した。

・苦痛や欠乏状態を避けたいという、動物としての低レベルな欲求

・精神的に成長したいという、人間としての高レベルな欲求

 これらの欲求は、生活全般と同様に仕事の場面でも満たされなければならない。彼は調査の結果から、職場におけるある要因は第1レベルの欲求事項を満たすが第2レベルの欲求は満たさず、第2レベルの欲求を満たす要因は第1レベルを満たさないという結論を導き出した。彼は前者の要因を「衛生要因」と呼び、後者の要因を「動機づけ要因」と呼んだ。

 「衛生要因」は職場環境に関連があり、以下のようなものがある。

・会社の方針と管理
・監督
・仕事上の対人関係
・作業環境
・身分
・安全保障
・給与