東京ディズニーリゾートに57歳で入社し、65歳で退職するまで、私がすごした8年間をお伝えしよう。ゲストとの感動的な触れ合いもあったし、上司からの指示に疑問や不満を抱いたこともある。楽しいこと、ハッピーなことばかりの仕事などない。それはほかのすべての仕事と同様、ディズニーキャストだってそうなのである。※本稿は笠原一郎『ディズニーキャストざわざわ日記』(三五館シンシャ、2022年2月1日発行)の一部を抜粋・編集したものです
某月某日 人間関係
SVからの思わぬ注意
同僚のキャストは性別も年齢も人生経験もマチマチであり、日々さまざまなあつれきや衝突が起きるのは仕方のないことである。キャストの直属の上司であるスーパーバイザー(SV)のもとには、毎日のように人間関係上の問題が訴えられるという。
ある日、女性SVの水上さん(仮名)が、朝礼が終わった後にストレージ前で話しかけ てきた。
「風間さん(仮名)から、笠原さんが自分のことをバカにしている、という訴えが私のところに来ているのだけれど、どうなのでしょう?」
風間さんは20歳の準社員の女性。高校を卒業してキャストになり、フードサービスキャストとして1年ほど勤めた後、カストーディアルキャストに代わって私と同じロケーションに来ていた。性格的にも活発で、私はふだんから彼女とよく話していた。
高校時代はバレーボール部で県大会ベスト8まで行ったとか、2人姉弟で弟は今高校生で就職活動に苦戦しているとか、幼いころに両親が離婚して母親は生協の配達員をして自分を育ててくれたとか、いろいろな話を聞かせてくれていた。
私も30年以上も生協に注文をしていたり、長女が生協に就職していたりすることもあって、彼女には親しみを持って接していたつもりだった。また、彼女も同じように思っているものだと思い込んでいた。
だから、この話をされたとき、水上さんが人違いでもしているのではないかと思ったくらいだ。
水上さんからその話をされた日、自宅に戻ってからもショックを引きずっていた。あの快活な風間さんがそんなふうに思っていたことが信じられなかった。