厳しいことを言うと、すぐに傷ついた、ハラスメントだとみなされてしまうので、不適切な言い訳にも穏やかに対応するしかない。こんな時代ゆえに、やたら言い訳をする部下がいて困るという管理職の声をよく耳にする。だが、そうした「言い訳」を注意深く聞いてみると、その部下が伸びていく可能性が高いかどうかが分かるのだ。そのポイントをお伝えするので、部下の言葉に注意して耳を傾けてみてほしい。(心理学博士 MP人間科学研所代表 榎本博明)
「言い訳をしない部下はやる気がある」
は正しい?
成果を生み出す組織にしていくためには、従業員に成長してもらう必要がある。そんな思いを抱える管理職と話すと、「仕事の能率が悪いから注意してもっと効率的なやり方を教えようとしても、『分かってます。ちょっと気がかりなことがあって注意散漫になってただけです』などと言い訳をして、こちらの注意やアドバイスが全然染み込まない部下がいて困ると嘆く。嘆きたくなる気持ちはよく分かるが、どんな言い訳をするかに着目してみるのも大事なことである。
その管理職は、「モチベーションの高い部下はあまり言い訳をしないから、言い訳をするかどうかでやる気のある人物かどうかを見分ける、ということですね」と話す。そう言えるケースもあるのだが、言い訳をする人物の中にもモチベーションの高い者はいる。
言い訳とモチベーションとの間には密接な関係がある。ただし、“言い訳をする人物はモチベーションが低く、言い訳をしない人物はモチベーションが高い”というような単純なものではない。言い訳の中身が問題なのである。
ある経営者は、モチベーションが低くて困る従業員について、次のようにこぼす。
「何かにつけて言い訳が多いんですよ。先日も、顧客対応がまずくて相手を怒らせてしまったのですが、いくら対応のまずさを指摘しても、『先方の言い分がおかしかったから』というような言い訳ばかり。自分の落ち度に気づいて、そこを今後修正してくれればいいんですけど。なかなか反省してくれなくて困ります」
別の経営者も、モチベーションの低い従業員について、次のように嘆く。
「成果を出している従業員は、営業成績が悪いと、自分の営業の仕方をさらに工夫しようと頑張るんですけど、その人物は、担当している地域が悪いとか、今回は運が悪いことが重なってうまくいかなかったとか、言い訳ばかりで自分のやり方を振り返ろうとしないんですよ。あれじゃ成長しないし、ほんとにお荷物社員です」