サブプライム問題の「戦犯」として、米国の2大格付け機関――ムーディーズ、S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)――の責任が問われている。そもそも、「格付け」とは信用に値するものなのか。格付け機関のビジネスモデルに潜む問題点を洗い出し、今後のあるべき姿を問う。
5月7日、世界を代表する格付け機関、ムーディーズのブライアン・クラークソン社長兼最高執行責任者が辞任を表明した。昨年8月には、S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)のキャスリーン・コーベット社長も退任しており、2大格付け機関のトップが揃って交代を迫られる異常事態となっている。
昨年7月、ムーディーズは、自社が格付けしたCDO(債務担保証券)184件、発行額5000億円相当について「格下げ要注意」と発表。さらに12月には、CDOを組み込んだ発行額12兆円相当の投資信託(SIV)も、格下げないし格下げ要注意銘柄に変更した。
S&Pも同様の大量格下げに踏み切った結果、金融機関は大混乱に陥った。格下げに伴い、CDOやSIVの価値は大幅に下落。メリルリンチ、シティグループ、モルガン・スタンレーといった米大手金融機関は数兆円単位の損失計上を余儀なくされ、日本や欧州の金融機関にまで飛び火した。米国の国内問題であるはずのサブプライムショックで全世界の株式市場が急落し、現在に至るまで金融不安は解消されていない。
そこで問われているのが、格付け機関の責任と信頼性である。なにしろ、ムーディーズとS&Pが格下げしたCDOのなかには、最上級であるトリプルAから一挙にジャンク格(投資不適格)にまで落ちた銘柄も少なくない。名だたる格付け機関が「債務不履行の懸念はほとんどない」と評価していた債券が、一夜にして紙くず同然になったのだ。