1913年に(大正2)に創刊した「ダイヤモンド」は、2024年に111周年を迎えた。そこで、大正~令和の日本経済を映し出す1年1本の厳選記事と、その解説で激動の日本経済史をたどる「111年111本」企画をお届けする。第19回は平成前期、2004~07年までの4年間だ。
【92】2004年
非正規雇用の若者が増加
「人材派遣」急膨張の光と影
バブル崩壊直後、業績悪化と雇用の過剰に苦しむ企業は、新規採用を抑制することで人件費の圧縮に励んだ。それでも1993年を底として新卒の就職状況は徐々に持ち直しつつあったのだが、97年夏のアジア通貨危機や、98年にかけての金融危機などで景気が急速に冷え込み、再び就職状況が悪化した。新卒の就職活動は困難を極め「就職氷河期」と呼ばれた。正社員として就職できず、フリーターや派遣労働など非正規雇用者となる若者が増加した。
多くの企業にとって非正規労働者は、都合が良い“雇用の調整弁”だった。というのも、直接雇用の正社員であれば給与や福利厚生費が固定費になる。しかし、同じ仕事でも派遣社員や業務請負にやらせれば外注費や委託費となり、変動費扱いにできる。繁忙期と閑散期のある製造業の現場では、グローバル市場における競争力を維持するために「雇わない経営」を積極的に取り入れていった。
当然ながら、人材派遣市場は急拡大を遂げた。95年度には1兆0172億円だったのが、わずか7年後の2002年度には2兆2472億円へ倍増していた。人材派遣労働者数に至っては、同期間で61万人から213万人に跳ね上がり、3倍以上に拡大している。こうした状況を背景に、04年12月11日号では「人材派遣急膨張の光と影」と題した特集が組まれている。タイトル通り、この構造には「影」の部分も大きい。