米国のバイオエタノール生産業者が、苦境に陥っている。原料となるトウモロコシの高騰で、経営が悪化しているのだ。

 2006年に2ドル台だったトウモロコシ価格(CBOT先物・1ブッシェル当たり:以下同)は、2008年1月には5ドルを突破。今年6月末には、7.5ドルに達した。結果、バイオエタノール工場の生産マージンは急減。6月には逆ザヤ、つまり“作れば作るほど赤字”という事態に陥った。

 その後、トウモロコシ価格は5ドル台まで下落しているが、依然厳しい状況にあることには変わりない。「06年にはバイオエタノールに注目が集まる一方で供給が追いつかず、生産マージンは一時9ドルに迫ったが、現在は1ドル台」(平山順・日本先物情報ネットワーク主任研究員)。中小規模の業者では、会社更生法の適用申請が続出し、大手でも新規工場の建設中止や延期が相次いでいる。

 先行きも、楽観はできない。今年度、トウモロコシは豊作が予想されているものの、需給はなおギリギリの状態だ。天候不順などが起きれば、再度の高騰もあり得る。

 トウモロコシ高騰の背景には、6月に米国中西部で起きた洪水や、新興国の経済成長による需要増、投資・投機資金の流入などもあり、バイオエタノールだけを責められるものではない。だが、米国のエタノール生産向けトウモロコシ需要はこの2年で約2倍に増大、需要の30%以上を占めるに至っており、高騰の大きな要因であるのは事実だ。それが自身の苦境を招くとは、皮肉な構図である。

 マージン低下のもう一つの理由は、エタノール価格が上がらないことだ。バイオエタノールはガソリンに混入されて使用されるが、ジェトロ・シカゴセンター三野敏克・農業担当ディレクターは「給油所などのインフラの未整備、生産工場の偏在による供給ボトルネック、対応車種の普及の遅れなどから、供給の伸びに需要の伸びが追いつかない」と指摘する。つまりは供給過剰で、ガソリン価格が高騰しているにもかかわらず、エタノール価格はこの2年、ほぼ横ばいなのだ。