10月30日、満を持して取引が開始された中国のベンチャー企業向け市場「創業板」は、“さもありなん”の過熱ぶりとなった。初日は上場28銘柄のすべてが一時公募価格の2倍以上に高騰、サーキットブレーカーの発動により一時取引停止に。さらに2日目には、20銘柄がストップ安となるなど、乱高下が続いた。
10年越しで準備を進めてきた当局は、個人投資家に向け、各種メディアやセミナーを通じて創業板の“リスクの高さ”についてたびたび注意を呼びかけ、深セン証券取引所も「過当な投機を全力で抑制する」と表明していたが、やはり抑え切れなかった。
もっとも、スタート直後のこれらの動きは“予想の範囲内”である。問題は、今後いかに着地させるかだ。ストップ安が続出した11月2日時点でも平均PER(株価収益率)は102倍に及んでおり、上海・深センメインボードの20~40倍と比べても、明らかに割高だ。「投資家は、上場企業、あるいは創業板そのものが“政府の支援を受けている”という認識で買っている面がある」(鈴木貴元・みずほ総合研究所アジア調査部中国室上席主任研究員)。
成否を左右するのは、上場企業の質の維持だ。創業板では現在、さらに100社が審査待ちであり、1000社が上場準備中ともいわれる。「ハイテク企業育成」の名の下に有象無象の企業が上場するようなことになれば、投資家の期待は一気に崩壊する。「当局は新規上場あるいは上場維持に厳しい規定を設け、スポンサー証券会社の監督義務も強化するといった措置を講じているが、それらがきちんと実行できるかが重要」(神宮健・野村資本市場研究所北京代表処首席代表)だ。企業側に関しては、特に適切な情報開示がなされるかがカギを握る。
創業板を“まっとう”な市場に育てられるか否かは、証券市場のみならず、中国経済全体の“健全な発展”を測る試金石となろう。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 河野拓郎)