先の第16回コラムではJAL(日本航空)を題材に、従来のフリーキャッシュフロー(フリーCF)に対抗するものとして、オプション-キャッシュフロー(タカダ式フリーキャッシュフロー)というものを紹介した。ただし、オプション-キャッシュフロー(オプションCF)は生まれたての指標なので、実績に乏しいのが弱点だ。
そうはいっても、キャッシュフロー計算書に対する経営指標は今後とも、どんどん開発されていくべきだと考える。
キャッシュフロー計算書が「第3の財務諸表」として会計制度に導入されたのは1998年。企業会計審議会『連結キャッシュフロー計算書等の作成基準』が始まりである。いまだ11歳の子供だ。
貸借対照表や損益計算書が、15世紀の大航海時代や18世紀からの産業革命を経て、数百年間にわたって鍛え上げられてきたのに比べると、キャッシュフロー計算書はヒヨッ子もいいところだろう。
それだけに、キャッシュフローそのものに対する理解が、いまだ不十分だともいえる。
筆者も、2002年に出版した『ほんとうにわかる経営分析』(PHP)ではキャッシュフロー計算書に対する理解ができていなかったため、経営分析の世界では長年の実績ある資金運用表を用いた。
ちなみにこの本は、今年で版を重ねること第21刷。大変な長寿であることに驚いている。
サブプライムローン問題でも
揺るがなかった三井不動産
しかし、資金運用表や資金移動表といったものは、第8回コラム(ニトリ編)のCVP分析や、第12回コラム(ソフトバンク編)のEBITDAなどとともに、もうそろそろ「お葬式」を出してやらねばならない時期だと考えている。
特にキャッシュフロー計算書を用いた経営指標が、これからどんどん開発されるべきと考えるのだが、同計算書でいまのところ市民権を得ているのは、フリーキャッシュフローぐらいのようだ。これは営業活動キャッシュフローと投資活動キャッシュフローを合算したものである。
しかし、こうして求められたフリーキャッシュフローは、前回コラムのJALや日立製作所の例でも指摘したように、どうにも頼りない。そこで今回は三井不動産を取り上げて、さらにフリーキャッシュフローの問題点に迫ってみよう。