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辻広雅文 プリズム+one

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貧困をイデオロギー問題として捉えた日本の不幸

 彼らを、あってはならない状況に置かれていると認識し、その存在に目をつぶらずに来た。彼我の差は、社会運動としての歴史あるいは社会運動を支える層の厚みの違いといえるだろう。

 何より、共和党のブッシュ大統領であれ、労働党のブレア前首相であれ、先進諸国の指導者たちは、貧困は撲滅すべき対象だと明言する。

 貧困は右も左もイデオロギーを超えて解決すべき問題だという認識が、国際常識なのである。

 それが、日本にはない。近年の歴代首相が貧困撲滅を公式非公式の場で発言したなど、聞いたことがない。

 なぜだろう。おそらくは、日本において貧困問題が、イデオロギー問題として捉えられてきたからだ。共産党だけが指摘、救済を叫んできたために、左翼的言説を嫌う右派、中道派が避けてしまったのである。

 視点を変えよう。貧困問題は格差問題の延長線上にはあるが、質的に異なっている。

 例えば、年収1000万円と800万円、300万円と100万円では、所得格差は同じ200万円である。

 さまざまな考え方があるが、格差は努力の違いの結果であり、それが生じることで社会が活性化するという考え、格差の是認もありえる。だが、年収100万円では暮らせない。

 彼はあってはならない状態にいる貧困者で、社会は存在を是認してはならない。

 今年1月、「論座」(朝日新聞社)に「丸山真男をひっぱたきたい~希望は、戦争~」という31歳フリーターの投稿論文が載った。

 自分たちフリーターには守るべきものなどないもない。それなら、戦争を起こして守るべきものを持つ人々がそれらを失うことで平等になりたい、溜飲を下げたい、という内容だった。

 彼らをあってはならない状態に放置すれば、社会はいずれ分裂、不安定化する。多大な社会コストになって跳ね返ってくる。

 貧困層の再発見は、貧困層のためだけではない。

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著者プロフィール

辻広雅文
(ダイヤモンド社論説委員)

1981年ダイヤモンド社入社。週刊ダイヤモンド編集部に配属後、エレクトロニクス、流通などの業界を担当。91年副編集長となり金融分野を担当。01年から04年5月末まで編集長を務める。主な著書に「ドキュメント住専崩壊」(共著)ほか。

この連載について

政治・経済だけではなく、社会問題にいたるまで、辻広雅文が独自の視点で鋭く斬る。旬のテーマを徹底解説、注目の連載です。

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