◇儲かる商売でないと、楽しめない

 2000年当時、ネットベンチャーというと、新技術や斬新なアイデアといった、飛び道具を前面に出す会社が多かった。一方、マクロミルはそれと対極的な戦略をとっていた。そのコアとなるのは、顧客に提出するデータの大本となる、アンケート回答用パネルの質の高さである。まずは儲かるビジネスの構造をつくり、泥臭く営業を重ね、面白さよりも「お金がきちんと回るか」を優先したのだ。儲からなければ楽しめない。そんな杉本氏の発想は、リクルートの新規事業で、資金の大切さを痛感した経験がもとになっているという。

◇ちょっと先の未来に必要なもの

 2012年から始めた「antenna*」には、杉本氏の好き嫌いが出ている。だが、杉本氏によると、大手企業が参入しづらく、「ちょっと先の未来に必要と思われるもの」を手掛けているという点で、マクロミルの事業とも共通項があるという。

 例えば、ヤフーニュースやスマートニュースなどが時事ニュースを扱う一方、「antenna*」はエンタメ、カルチャー、ファッションなどに特化することで、大手マスメディアとは一線を画すポジショニングをしているのだ。「本物のコンテンツを、若い人がふれるデバイスに届けたい。正義はわれにあり」という気概で杉本氏は臨んでいる。

 また、スマホユーザーを抱え込むなら、趣味やカルチャーのほうがマーケティングに活かせ、広告の配信先やプロモーション先に価値を提供できるという読みもあった。時事ニュースへの興味は誰もがある程度持っているため、その人のポリシーや業種などと関連が薄い。すると、何の時事ニュースに興味があったのかを収集し、類型化しても、調査サンプルとしての価値は薄いと見たのだ。競合企業が、時事ニュースを配信して、顧客データベースの獲得に血眼になっている間に、あえて「antenna*」は主戦場を避けている。このように、杉本氏は、独自の立ち位置で畑を耕しているのだ。

【必読ポイント】
■修羅場で腹をくくるのが好き(木川 眞)
◇修羅場になると生き生きする

 ヤマトホールディングス代表取締役社長の木川氏は、これまで富士銀行でキャリアを積んできた。最初の10年は金融自由化のタイミングで、日本で初めて金融環境の予測に携わるなど、ストラテジスト的な仕事を楽しんでいた。しかし、人事部時代の32歳のときに大病で3ヵ月間銀行を休むという挫折を味わった。ほぼ毎晩タクシー帰りという忙しさによる過労も影響していた。木川氏は「人生を棒に振ったかな」と思うほどの悔しさを感じたが、これがバネとなり、「好きなことをやって悔いなく生きる」という価値観につながった。