東京電力社長 清水正孝<br />資源の争奪戦は待ったなし<br />増資でスピード感を持ち挑むPhoto by Toshiaki Usami

──最大1兆円の海外投資を軸にした中長期経営計画「2020ビジョン」を発表し、29年ぶりに大規模な公募増資を行った。なぜか。

 国内は、経済成長に伴い、電力消費量が伸びる時代ではなくなった。一方で、アジアを中心とした新興国は、確実に成長が見込まれる。成長を下支えするエネルギーインフラの整備は、待ったなしにやって来る。そこに利益成長の機会がある。これまでも、国内の技術や人の強みを海外で生かそうと、実績を積み上げてきた。さらに海外へ目を向けようと、10年後の将来像を示した。

 世界でエネルギー資源の争奪戦が起きているなか、その安定確保という課題に日々、向き合っている。燃料調達や海外発電のプロジェクトで先手を打つためには、積極的な投資が必要となる。なにより、スピード感が勝負だ。

 たとえば、オーストラリアのウィートストーン液化天然ガス(LNG)開発プロジェクトは、埋蔵量や品質が共に高い優良案件だ。これを逃すわけにはいかない。中国や韓国が進出しつつあるなか、資金調達に遅れが出れば、すぐに奪われてしまうだろう。

 バランスシート上は左の借方にリスク資産が増える。ならば、右の貸方に対応力を持たせたい。資本に厚みを持たせ、積極的な投資を行う。そこで、増資を決めた。