前回の高田純次さんのインタビューで「カバーを掛け替えて売ればよかったよ」と“適当”な賛辞を贈られ、高田さんのマネージャー氏も愛用していることが発覚した「ほぼ日手帳」。

この手帳連載の最後を締めくくるのは、まさにそのほぼ日手帳をプロデュースする糸井重里氏だ。ほぼ日手帳といえば、糸井氏が主宰する『ほぼ日刊イトイ新聞』から誕生し、今年10年目を迎える人気のシリーズ。さまざまなブランドとコラボしたカバーを作るなど、これまで斬新なアイデアで「紙の手帳のたのしさ」を発信してきた。節目となる今年は、初のビジネスモデル「ほぼ日手帳WEEKS」を発表して話題を集めている。

紙の手帳へのこだわり、そしてビジネスモデル発売の狙いなどを語ってもらった。(聞き手/ライター 谷山宏典)

アイデアは生まれたばかりの赤ん坊
紙の手帳だと“育てる”ことができる

――まずは、紙の手帳とデジタルツールをどう使い分けているか、教えてください。

いとい・しげさと/1948年生まれ。コピーライター。「ほぼ日刊イトイ新聞」主宰。作詞、ゲーム制作など多岐にわたり活動。『ほぼ日刊イトイ新聞』から誕生した人気のシリーズ「ほぼ日手帳」は、今年10年目を迎える。

 それぞれの役割を明確に意識して使っている実感はなく、手書きとデジタルを自然に使い分けている感じです。たとえば、iPhoneはちょっと情報をつまむのに使っているし、長めのメモはパソコンで書いて自分宛にメールしています。そのメールを専用のメールボックスに集めておくと、メモのタイトルがズラッと並ぶので、あとから見返しやすいんです。スケジュール管理は主にiPhoneを使いながら、手帳にもちゃんと写しておいて、両方を見ています。

 紙の手帳は、やはりアイデアメモとして使うことが多いですね。本を読んでいるときやテレビを見ているとき、ネットで検索しているとき、ふっと頭に思い浮かんだことを書いています。ただ、先ほどもお話したように長めのメモはパソコンで書いてしまうので、紙の手帳に書くのは断片的なメモですね。単語とか、フレーズとか。

――同じメモでも、パソコンと紙の手帳では違うものなのですか。

 パソコンだと、最後まで書きたくなってしまうんですよ。ただ、最後まで書いてしまうと、アイデアがそのサイズ、その形でおさまってしまう。

 僕にとってアイデアって、生まれたばかりの赤ん坊みたいなもので、場合によってはその場ですぐに育ててしまわずに、しばらく放っておくことも必要なんじゃないかなと。放っておいて、しばらくしてから再会すると、別の形に育っていることもありますから。紙の手帳だと、思いついた断片的なアイデアをさっと書いて、そのままにしておきやすいんです。