インタビュー
湯崎英彦・広島県知事

ハードの強みにソフトを付加
カープと共に質的転換果たす

──この25年で広島はどう変わりましたか。

ゆざき・ひでひこ
1965年広島市生まれ。広島大学附属高校、東京大学法学部卒業。米スタンフォード大学経営大学院修了。旧通商産業省を経てアッカ・ネットワークス設立。2009年より現職、現在2期目。
Photo by Akinori Shimono

 まさに1991年を最後に優勝から遠ざかり、雌伏の時を過ごしたカープと似ていて、広島県は鉄鋼や自動車、造船など重厚長大産業を抱える土地柄なので、91~92年のバブル経済の崩壊以降、非常につらい時期を過ごしてきました。

 しかし25年を経て、質的転換を果たしました。従来の重厚長大の「ハード」なものに「ソフト」なものが「アドオン」されていくという変化が起きています。

 具体的に県内企業を例に取れば、マツダは従来のロータリーエンジンに象徴される技術面からデザイン面での優位性を発揮するようになったし、伝統産業では熊野筆がなでしこジャパンの国民栄誉賞の副賞として贈答されたように、単に機能面だけでなく、人の生活価値に密着し、感動を呼ぶような事例が増えてきた。それが、この25年の変化といえます。

──そこがカープと重なる、と。

 カープも地元球団として愛され、強いチームだったのが、お金がないから高い年俸の選手をつなぎ止められないという弱みがあった。だからこそ、中南米で選手育成をしたり、他球団が目を付けていない選手を探してきて能力を引き出す力を付けた。さらに、そうして頑張っている若手選手の姿が、カープ女子のような新しいファン層の拡大につながった。弱みの克服に頑張ってきたことが強みに転換されつつあります。

 従来の重厚長大産業の弱みに新しい価値を付加して強みに変えている広島県全体とカープは、軌を一にしてきた感がありますね。

 マツダスタジアムも同じで、ただ野球をするハードの性能、機能ではなく、野球を契機に子供も女性も楽しめるボールパークとして、新しいソフトの部分が付加されています。

──サッカーJリーグのサンフレッチェ広島もこの25年で生まれたチームですが、今、新スタジアムの建設で揺れています。県・市・商工会議所が主張する「みなと公園」か、サンフレッチェが主張する「旧市民球場跡地」か「その他の候補地」か、立地で折り合いがついていません。

 マツダスタジアムに象徴されるように、スポーツが地域社会に与える影響を考えると、サッカーのコアなサポーターだけでなく、サッカーファン以外も来て楽しめるようなスタジアムになるといいと思っています。それが実現できるようなスペースやアイデアが大事なのであって、立地だけにこだわると、どうしてもそういう話になりません。

──次の25年、どういう広島県をつくっていく方針ですか。

 新しい地平を切り開く力、イノベーションが次々と起こる体質をつくっていきたい。そのためには産学連携や、優れた人材の育成・誘致が必要で、そういう人材を引き付けるための生活環境や労働環境が重要となります。クリエイティビティを発揮するには、仕事にも生活にも多様性や余裕が必要で、ワークとライフのどちらも高い次元で実現できる環境を目指したいと考えています。

──昼間は仕事を一生懸命やって、夜はスタジアムでカープを応援するようなライフスタイルですね。

 それがカープでもいいし、サンフレッチェでもいい。夕方から船で夜釣りを楽しむのもいいし、広島では午後6時に職場を出れば7時にはスキー場のゲレンデに立てる。大体のレジャーを、都市部から1時間から1時間半も移動すれば楽しめる環境にあります。通勤時間も短いから家族との時間も過ごせる。世界のスタンダードではあるが日本では最先端の、そんなライフスタイルを実現できる場所でありたいですね。